減反廃止でどんなことが起きそうですか。

荒幡:2013年10月に産業競争力会議が減反廃止をぶち上げ、その後、政府が正式決定した。安倍晋三首相はあのとき、「減反廃止」という言葉を使ったが、農林水産省の正式文書は「生産調整の見直し」だ。

 あのころはかなり乱暴な改革が予想された。現場では麦や大豆の転作補助金までなくなるという噂が広がり、コメを自由に作っていいという話が流布していた。「そうではない」と待ったをかける動きがその後出て、急激でドラスチックな改革になりそうだというムードは押し戻された。

米価を上げてよいのか

政策のスタンスが変わったのか、それとも現場の誤解だったのですか。

荒幡:意思決定の中身はわからないが、官邸はドラスチックな改革をやる意欲があったと推察している。だが、農水省は当初から実務的に手堅くやろうとしていた。ただ、一番大きいのは、現場の誤解だろう。

 今ほど飼料米の生産が増えていない状態で、まったく制約をなくせば主食米が相当な増産になり、価格が暴落する可能性があった。その点は、もう少し穏やかな方向に修正された。飼料米は適切に機能すれば、円滑な生産調整の廃止と、より市場の動きを取り込んだ生産に向けた改革にプラスに働く。だが、短期的に見てどの米価水準が適切かを判断するのは難しい。

立場によって適切の意味が変わりますね。

荒幡:生産者サイドは、米価はもっと高くないとダメだと言う。以前は高かったが、今は下がり過ぎたので、その回復の途上にあるという意識だ。生産者は高いほうがいいに決まっているのでそういう言い方をするが、それを真に受けて本当に米価を上げてしまっていいのかという問題はある。

 (卸と農協の取引価格は)2014年は60キロ当たりで1万2000円くらい、15年が1万3000円くらい、16年は1万4千数百円だった。かなりすでに上がってきているが、今年はそれをさらに上げようとする動きがある。これで本当に大丈夫なのかと心配になる。

 米価を上げ過ぎると、生産者は当然、増産したくなる。これまで飼料米や麦、大豆の収益性が、かなり際どいところで主食のコメを上回っていた。米価が上がれば、飼料米や麦、大豆から主食米に戻すという逆方向の動きが起きる。過剰になれば米価が下がる。穏やかに下がればいいが、おそらくはどかっと下がり、生産者に打撃を与える。無理やり米価を上げるのは問題が多い。

「コメの単収を高めるべきだ」と説く岐阜大の荒幡克己教授
「コメの単収を高めるべきだ」と説く岐阜大の荒幡克己教授

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