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 べつの立場からみたら、何かしら気づきがある好例といえるだろう。日本では、都市の農地はどんどん減ってしまって、都市農業は衰亡の危機にあると思われている。ところが、日本よりも都市化が進み、都市から田畑が消えてしまった韓国からみれば、日本の都市は意外なほど緑の空間が残っている。その核として田畑がある。

「ものづくり」への敬意を

 小野さんが指摘するように、高度成長時代の価値観からすれば、それは「中途半端なもの」と映るかもしれない。だが、低成長のもとで急激に高齢化が進む日本社会にとって、都市の農地は新たな価値を帯びる。つくり手の顔のみえる田畑として、あるいは市民が農作業を楽しむ農園として。シンプルに割り切らない日本的なあいまいさも、ときに社会にとってプラスに働くこともある。

 ちなみに、かつて朝鮮社会には「両班(ヤンバン)」という身分制度による支配・官僚機構があったように、韓国には学問を上とする教養主義が根強くあり、ものづくりを一段低くみる時代が長く続いた。農家の「ストーリー」が日本のように価値を持ちにくいのは、そんな文化的な背景ゆえなのだろうか。

 ところが、韓国通の知人によると、最近は「職人」の価値をいままでより評価する動きも出てきているという。モデルは日本。日本に旅行に来る韓国人が増えたことで、ものづくりにもっと敬意を払うべきだという考え方が台頭してきているというのだ。日本の都市に意外なほど田畑が残っていることの「発見」と同様、お互いを知ることが生むプラスの化学変化といえるかもしれない。

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