なぜ日本は都市に農地が残っているのでしょう。

 「韓国は大規模経営か、市民が自分のために野菜をつくって食べるかのどっちかでいいんじゃないかと思っているようにみえました。そういうふうにスパッとしてるほうが政策的にはきれいなんでしょう。でも日本はそうでないがゆえに、多様性が生まれているという見方もできる。(国際的には)韓国より日本のほうが特殊なんだと思います」

 「いかに効率化を目指し、都市をつくるかという観点からすれば、日本人もマンションをどんと建てて、そこに人がいっぱいいて、働きに行ってビジネスをするっていうのがいいと思っていた。昔のあぜ道が残っている開発は中途半端でよくないってみんな思ってた。東京もソウルみたいに、もっと都市化したかったんだと思います」

 「ところが、日本の場合、善かれあしかれ『まあまあ』って言いながら、みんなを立てていこうとした結果、思ったほど離農が進まなくて、(市街化区域内に農地や緑地を残すための)生産緑地法みたいなものもできた。それは日本のいいところなのかもしれません。ここなんかその典型ですが、結果的に残ってしまった農地が、日本、そして東京の価値を象徴するものになる可能性があると感じました」

 「一方で、韓国は日本より危機感が強いと思いました。共同体が失われることや、環境問題、教育問題がより切実であるがゆえに、『やる』って言ったら、全国大会を毎年やり、予算を計上し、高い数値目標を立てる。例えば、ソウルでは『ソウル市民が都市農民になりましょう』っていう運動を展開しています。極端と言えば極端ですが、『とにかく緑をあちこちにつくりましょう』っていう勢いがすごい」

「農的なもの」から何を得るか

日本と韓国の都市農業で共通点はありましたか。

 「むしろ、実際の取り組みでは、日本とまったく違うと驚くことはありませんでした。都市が置かれている状況は向こうのほうがきついし、農家へのスタンスも違う。それでも、子どもが遊ぶ場所や高齢者や障害者の居場所がほしいし、若者は薄くなったつながりを復活させたい。そのために一緒に土に触れる。都市に暮らす人が、農的なものに触れることで、何を獲得しようとしているのか。その点では、日本も韓国もほとんど変わりません。お互いに近いし、もうちょっとお互いのことを知るべきだと思いました」

 「向こうにアグリメディア(東京・新宿)のような、企業が経営する市民農園があるのかと聞いたら、『よくわからない』という反応でした(2015年3月13日「『ライバルはフィットネス』の異次元農場」)。韓国では市民農園はNPO的な取り組みになっていますが、アグリメディアやここを韓国の人がみたら面白いと思うんじゃないでしょうか。こちらも、韓国の市民が小さいところ、隙間を使ってうまくやっているのをみたら、発見があるかもしれません」

小野氏が運営するイベント農園「くにたち はたけんぼ」。都市農地は日本の価値だ(国立市)