韓国の都市農業は、農家とは無関係なものなのですか。

 「日本で都市農業博覧会を開くとしたら、農家が都市で栽培した野菜を売るマルシェなどに力を入れると思います。私がやってる国立野菜フェアなども、まず地元の農産物を食べましょうという方向に行く。ところが韓国に滞在した3日間で、本業が農業という人に会わなかったんです」

 「都市農業博覧会では一切、野菜を売ってませんでした。売っているのは、苗やタネ。『ジャガイモは8月に植えて、10月に収穫する』といった栽培カレンダーやタネのカタログを配ってました。農家というものが、完全に切りはなされているんです。あくまで、市民のなかで失われてしまった農的なものを、自分の生活にどう取りもどすかということにスポットが当たっていました」

農家のリストラが進む

なぜでしょう。

 「韓国は自由貿易協定(FTA)を多くの国と結んでいる関係で、農業はその犠牲になるのは仕方ないという空気を感じました。農家の高齢化が進み、どんどん廃業していって、そこに離農補助金が出ている。農家のリストラが進んでいるんです。政府も農業者もあきらめモードに入っていて、既存の農業には期待しないという悲しい状態になっているのではないかと思いました」

 「私が参加した発表会も、屋上の畑でコミュニティーを再生する取り組みや、空き家の庭のガーデニング、障がい者の自立支援、子どもの教育などで、農家が絡んでいませんでした。一方で政府は、植物工場だったり、食の安全保障の観点から、コメは守らなければならないので、その大規模化を進めていく。日本でいま起きていることが、極端な形であらわれているんです」

日本は都市の住民と農家の距離がもっと近いですね。

 「そうしなければならないという雰囲気があります。方便かもしれませんが、農家のことを『農家さん』『お百姓さん』と、ちょっと高めにみる言い方をします。農的なイベントをやるとき、がんばってくれている農業を支えなければならない、農家にとってメリットのあることをやらなければならないと考える。市民の側から、『がんばってください』っていう雰囲気があるんです」

 「韓国は、それがないのではないかと感じました。日本の農家は、農協に象徴されるような政治力もありますが、文化的なよりどころになっているということもどこかにあります。私がここでこういうことをやっていると、消防団に入ったり、町内会に出たりします。昔ながらの祭にも参加します。地域社会って、農村文化から始まっているんです」