その結果、「田植えに必要な量だけ苗がある」という状態にぎりぎりまで近づけることができた。苗の廃棄は以前の3分の1以下に減った。データ管理とカイゼン指導の歯車がかみ合った好例だろう。

 豊作計画のユニークさは、カイゼンスタッフが鍋八農産の現場を見て、システム開発を始めたときと同じようなプロセスを、他の農場でもくり返す点にある。できあがったシステムを提供して、それでおしまいではないのだ。

レンコンは出荷チームが取りに行く

トヨタの指導で作業工程を見直したOneの宮野義隆副代表(石川県金沢市)

 指導は、けっこうシビアなやり取りから始まる。「全然片付いてないですね。これでモノがどこに置いてあるかわかりますか」。昨年から豊作計画を取り入れたレンコン栽培の農業法人、One(石川県金沢市)の宮野義隆副代表に対し、カイゼンスタッフが作業場を見て突きつけた一言だ。内浦アグリサービス(石川県能登町)の瀬爪忠副社長に対しては、コメの乾燥施設を見ながら「言ってることと、やってることが違いますね」。

 Oneがトヨタの指導で作業場を片付けた話は以前この連載で伝えたので、今回は作業効率を高めたエピソードを紹介したい(1月20日「『注文だ。収穫してくれ』では現場は回らない」)。

 成果の1つが、レンコンの収穫と出荷の仕事の見直しだ。以前は、収穫チームが1日2回、昼と夕に作業場にレンコンを運んでいた。収穫チームにとって最も煩わしいことは、収穫量が注文より少なく、畑に掘りに戻ることだった。それを避けようと、多めに収穫していたため、注文より多く掘り過ぎて余ってしまうことがあった。出荷が翌日になれば、当然鮮度が落ちる。

 「注文量は決まっているのに、なぜ収穫し過ぎてしまうのか」と疑問に思うかもしれないが、工業製品と違い、レンコンは形や大きさが一様ではない。しかも、水の下の土の中に潜っているので、掘ってみないと形や大きさはわからない。そこで、「足りないより、余ったほうがいい」と考えた。収穫は基本的に手作業なため、出荷チームから連絡しにくいという事情もある。

 トヨタのスタッフは2つの理由でこのやり方を見直すよう求めた。「客にとってはリードタイムが短いほうがいい」「在庫は持つべきではない」の2つだ。そこで、収穫チームがレンコンを運ぶ方法をやめ、出荷チームが取りに行く方法に改めるとともに、回数を2倍の4回に増やした。そうすることで以前と違い、作業の進捗状況を収穫チームに伝えやすくなった。