調査を始めてすぐ、無駄の多さに気づいた。乾燥機に入れることができない籾が、作業場に積み上がっていた。田んぼの地図をコピーして毎日スタッフに配り、仕事が終わるとその日のうちに捨てていた。

 どうやって無駄を省くか。結論はシンプルだった。作業をIT化する――。こうして、クラウドを使ったデータの活用と、カイゼン指導を両輪とする豊作計画ができあがった。

育苗のムダを3分の1に

 開発に参加したことで、鍋八農産の経営は見違えるほど効率的になった。

 1000枚を超す田んぼをデータ管理し、いつどこで作業すべきかが簡単にわかるようになった。作業状況は、画面の地図に表示されるピンマーカーの色で把握する。黄色は「今日作業」、緑色は「作業中」、灰色は「作業終了」といった具合だ。前年と比べ、作業が遅れているかどうかもチェックできる。こうした情報は、事務所にあるパソコンと、スタッフのスマホで全員が共有し、刻一刻と内容が更新されていく。

 デジタルで管理することで、効率が格段に高まった例の1つが育苗だ。以前は、田植えで苗が足りなくなることがないように、多めに苗を作っていた。過度に安全を見込んでいたため、1割くらい廃棄が出る。鍋八農産は作業受託も含めると約200ヘクタールの広大な水田を管理しており、金額に直すと数百万円分を廃棄していた。

 問題は、どれだけ苗が必要かを頭の中で大まかにしか把握していない点にあった。田植えの期間は4月上旬から6月上旬までの2カ月間。トヨタの指導でこれに合わせ、圃場ごとに必要な苗の量を計算し、1日当たりどれだけ作業ができるかを考慮に入れ、苗を栽培する時期を調整した。

鍋八農産はスタッフが目標を立てるようになった(愛知県弥富市)