今回取り上げるのは、トヨタ自動車の農業支援システム「豊作計画」だ。

 連載では、企業の農業ビジネスの成否をテーマに、いくつかの事例を紹介してきた。ある企業は田畑を借りたものの、栽培技術を身につけることができずに撤退した。別のある企業は農業法人との連携がうまくいかず、黒字化のメドが立たずに撤退した。企業の農業ビジネスは印象と違い、順調には進んでいない例が数多くある。

 一方、既存の農業のやり方を地道に学び、農場を広げている企業もある。赤字を許容しながら、地域の田畑を守るために農業を続けている地場企業もある。

「豊作計画」とは

 そうした中で、トヨタが2014年にサービスの提供を始めた豊作計画は、最も「ふに落ちるケース」の1つと言える。最大の特徴は、自ら農業をやるのではなく、農家や農業法人の作業の改善を支援する点にある。

 豊作計画はよく、「クラウド上で農作業をデータ管理するシステム」といった言葉で説明される。実際、パソコンやスマホを使い、膨大な田畑を効率的に管理する点に強みがあるのだが、サービスにはもう1つの柱がある。トヨタ生産方式によるカイゼン活動だ。と言うより、カイゼンが軌道に乗って初めて、システムを使いこなせるようになると考えたほうがいい。

 これに関連し、トヨタの担当者は次のように話す。

 「ツールが先にあって、カイゼンが後ではないんです。道具を入れたらよくなると考えてるようだと、うまくいかない。ツールは、全体をよくするカイゼン活動の道具の1つという位置づけです」

 ここで大切なのは、「全体をよくする」ことで何を目指すかだ。

 「まず、経営方針をちゃんと聞かせてもらいます。もし方針がないなら、作ってもらいます。規模を大きくしたいのか、収益性を高めたいのか。方針に基づいて、よくするための活動をしていくんです」

豊作計画の開発に協力した鍋八農産の八木輝治社長(愛知県弥富市)

 トヨタは愛知県の有力農業法人の鍋八農産(弥富市)の協力で、トヨタ生産方式が農業に活かせるかどうかを2011年から検証し始めた。まずやったのは、カイゼンスタッフを農場に送り、仕事の内容を理解することだった。