植物工場を運営・販売するみらい(東京・中央)が昨年6月末、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。日本でもっとも有名な植物工場ベンチャーとして盛んにメディアに取り上げられてきた旧みらいの破綻は、業界に衝撃を与えた。植物工場はその後、通信・電設資材のマサル工業(東京・豊島)への事業譲渡が成立し、いまは「MIRAI」(千葉県柏市)に社名を変えて野菜の栽培を続けている。この記事では、破綻した会社をMIRAIと区別するため、旧みらいと表記する。
なぜ旧みらいは破綻したのか。新生MIRAIは事業を軌道に乗せることができるのか。旧みらいが破綻にいたるまでの経緯を知るMIRAI社長の室田達男氏と、マサル工業社長とMIRAI会長を兼務する椎名吉夫氏への取材をもとに、2点を考えてみたい。
多くの見学者が夢をふくらませたが…
まずは千葉県柏市にある「柏の葉グリーンルーム」から紹介しよう。物流倉庫などが立ち並ぶ一画にあるその建物は、文字通り小型の工場か倉庫にしかみえない。このなかに「畑」があるとは想像もつかず、アスファルトに囲まれた風景に完全に溶け込んでいる。

建物のドアを開け、階段を上り、見学用のスペースに入る。ガラス越しにとなりの部屋をのぞき込むと、幾段も積み上げられた棚でレタスが育てられている。棚を照らすのはピンク色のLED。陽光の差す田畑と違い、ひんやりとした印象を受ける。苗を棚に移しているスタッフは、頭から足先まで、肌の露出がほとんどない作業着姿で、農家というより、工場の従業員というほうがやはりしっくりくる。
じつはこれがクセモノなのだ。どれほど多くの見学者がこの光景を見て、農業の将来に夢をふくらませたことだろう。「無菌で安全」「天候に左右されない」「これこそ未来の栽培技術」。様々な言葉が頭をよぎっただろう。だが、旧みらいは、この工場が稼働してから1年余りで経営が暗礁に乗り上げた。

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