もちろん、そうなのだろう。だが、これはパートのモチベーションの話であって、社員よりパートが生鮮を発注したほうがうまくいくということではない。この点については、次のように説明する。

地域の食文化を大切に

 「食文化は地域によってまったく違う。それを一律に『こうだ』と言うのはおかしな話。その地域に住んでいるパートナーさんが、地域のことを一番よくわかっている。地域の食文化についてよく知っているパートナーさんが店の主体にならなければならない」

 ヤオコーにとって、パートが商品を発注することは、たんにモチベーションを高める以上の戦略的な意味があるわけだ。そして、それを推し進める背景には、「全員参加の個店経営」を発展させるうえでの危機感がある。

 「地域の食文化を大切にする。それをもっと速く進めないと、地域から信頼される店は作れない。店舗数が150を超えてくると、一律に同じような商品を入れるのが、どうしても楽。でもそれは、会社のコンセプトとはまったく違う。各店をちゃんと自分たちで運営できるような組織にしていかないと、今後店がもっと増えていったとき、個店経営が薄くなってしまう」

 担当者はここで、「チェーンストア理論に押されてしまう懸念がある」とも強調した。見た目は多店舗展開しているスーパーだが、本部主導の効率性を追求するのではなく、店舗数が少なかったときの地域密着型の店作りを保とうとしているのだ。

 そのために必要なのが個店主義であり、それを可能にするのが、パートの自主性の発揮だ。「もっと主婦の意見、女性の目線からの意見を上げてもらいたい」。ヤオコー独特の張りのある店作りの核心に、パートの存在がある。

 優れた経営に共通だが、支えているのは難しい理論ではなく、ごくシンプルな理念であることが多い。取材中、担当者は何度も「まだ理想には遠い。十分に実現できていない」と話していた。個店経営とはある完成された形ではなく、地域に合わせて徐々に具体化していくものなのだろう。ヤオコーの店作りの変化に今後も注目していきたい。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売