農家の顔が見える地元野菜のコーナー(写真提供:ヤオコー)
農家の顔が見える地元野菜のコーナー(写真提供:ヤオコー)

 取材でまず質問したのは、地元野菜の取り扱いだ。事前に同社の本社に近い川越西口店(川越市)をのぞいてみると、売り場に入ってすぐのところに地元の農家の野菜のコーナーがあった。地元野菜の棚は他のスーパーにもよくあるが、ヤオコーで興味深かったのは、全国各地の農産物を置く平台の上にも、ある1人の地元農家の野菜がかなりの面積で並んでいたことだ。

顔の見える関係

 品ぞろえや棚割りを本部が決めるのが、チェーンストアのオペレーションの基本。これに対し、ヤオコーは「店ごとに地域の消費者をよく見て、そのニーズに合った品ぞろえをする。売価も含め、決定権は店側にある」という。もちろん、本部から「案内」という形で品ぞろえのメニューは出しているが、それを採用するかどうかは「店の判断」に委ねられている。

 地元野菜としてコーナーにまとめる農家は各店に10人ぐらいいて、全体では約1500人。川越西口店の場合、そのうちの1人の野菜が本部の示したメニューに代わり、平台の主役になっていた。この農家はまだ30代前半で、「非常に頑張っている」という。

 地元野菜の拡充と並行して進めているのが、各地の農家や産地との関係強化だ。「我々小売りと生産者が情報交換しながら、安定した品質のものを提供し続ける」のが目的。「市場を通したスポット買いでは、売る方はいかに高く売るかを考え、我々はいかに安く買うかばかりを考えがち。そこには感情や心はなく、商品が年々よくなっていくことは絶対ありえない」。

 農家や産地との取引強化の目安は、農家と「顔の見える関係」になれるかどうかにある。これには2つの意味がある。1つは、ヤオコーと農家の関係。農家と情報交換しながら、「来年こういう形のものを作れますか」といった提案ができる関係を作り、品ぞろえを充実させていく。

次ページ マスデメリットの懸念