車で火事を見に来る「やじ馬」の対策も手伝った。建設会社のため、三角コーンや誘導棒が会社にある。ふだんは工事現場で使うそうした道具を活用し、やじ馬で道路が混乱し、消火活動の妨げにならないように交通誘導を支援した。

重要なのは「地域」

 重要なのは、消防署の本部から一つ一つ要請を受けこういう連携プレーが実現したのではなく、谷村建設の社員でもある消防団員と、他の社員が連絡を取り合い、臨機応変に必要な手を打ったという点にある。

 消火活動にも使える機器をたくさん持っている建設業という性格上、サポートが多岐にわたったという側面はある。ただし、重要なのは「地域」というキーワードだ。都市部では、なかなかこういう光景は想像しにくいだろう。そして、谷村建設がいくら赤字続きでも子会社の農業事業をやめようとしないことも、こういう文脈からしか理解できない。

 赤字であることを強調したが、けして縮小均衡で事業を続けているわけではない。むしろ逆。トマトはもともと3棟で作っていたが、需要に応じきれなくなったため、稲の育苗のハウスもトマト用にした。

 一方、新たに稲の育苗用のハウスも3棟設けた。稲作は中山間地で3ヘクタールで始めたが、離農する農家から田んぼを引き受けているうちに、今は7ヘクタール強に広がった。このほかに、平地でも3.5ヘクタールでコメを作っている。

 もちろん、効率化の努力はしている。例えば、稲作は条件の悪い中山間地が中心だが、少しでも無駄を減らすため、ほかの担い手と話し合い、高齢農家がリタイアするときは、近くの担い手が田んぼを引き受けるようにしている。飛び地になるのを防ぐためだ。

 ただし、黒字化を目指し、本当に効率だけを優先するのなら、一番いいのは中山間地の田んぼを引き受けないことだ。だが、それは谷村建設の選択肢にはない。

中山間地の草刈りはとくに重労働(新潟県糸魚川市)