そこでひらめいたのは湯川代表だ。「ハウスに遮熱シートを張ったらいいんじゃないですか」。大学に確認すると、ビニールハウスなら、設置してもいいことがわかった。河鰭教授も始めてすぐに「全然いいよ、これすごい」と結果を確信した。

自然に溶け込む

 開発に着手したのが2014年11月で、翌年の春ごろには手応えをつかめたという。もちろん、遮熱シートの張り方など、施設を完成させるうえで試行錯誤が必要な点はいくつかあった。だが、着手から半年足らずで結果が見えたことからわかるように、「植物工場とはこういうもの」という先入観にとらわれず、遮熱シートでいいと気づいた時点で勝負は決まっていた。

 「必要は発明の母」と言うべきか、「コロンブスの卵」と言うべきか。中で野菜が育てられていることなど想像もつかない既存の植物工場と違い、農村風景に自然に溶け込む植物工場はこうして誕生した。

 今年の3月にはプランツラボラトリーと東大とが共同で特許を取得し、ビジネスを広げる環境も整った。ビジネスベースの挑戦はこれから始まるシステムと、既存の工場を比べ、どちらがどれだけ優位と判定するのは慎むべきだろう。だが、農業界では異端の扱いだった植物工場に、新たなメニューが登場したことは注目に値する。遠くないうちに、続報をお届けしたいと思う。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売

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