いったん話は変わるが、湯川代表は大学時代にLEDを研究し、卒業後はIT企業を立ち上げた経歴を持つ。前者は植物工場の設計に直結し、後者はベンチャーの運営に役立っている。プランツラボラトリーがいま施設の企画や販売で話し合いを進めている作物には、イチゴやレタス、ブルーベリーがある。ここまでなら、「植物工場の幅が広がりつつある」という感想で終わるかもしれないが、まだ先がある。魚の養殖や養鶏の話も進めているのだ。
魚、鶏、一気に飛び越える発想で
遮熱シートで室内環境を外界と切り離すことがこのシステムの本質で、その中で何をするかは別次元のテーマなのだ。極端に言えば、環境のコントロールが作業の成否を左右する対象なら何でもいい。魚の陸上養殖や養鶏は生産の仕組みがすでに確立されており、既存の機器を施設の中に入れるだけで、これまでより効率的に生産できる可能性がある。こうなると、植物工場という名前には収まらなくなってくる。
もし、湯川代表が栽培技術の専門家だったり、農家の延長の経営者だったりしたら、植物工場の範囲を一気に飛び越えるような発想は出にくかっただろう。それを可能にしたのは、ベンチャー起業家特有の発想の柔軟性だ。河鰭教授は園芸の専門家にもかかわらず、この施設の開発にとりかかったとき、ただちに放熱の仕組みについて調べるなど、一部の研究者にある「視野の狭さ」とは無縁の人で、パートナーとしては最適だった。
ではそもそも、なぜビニールハウスを植物工場に作りかえることを思いついたのか。答えはいたってシンプルで、西東京市のキャンパスは建物を新たに建てることができなかったからだ。もともと2人はコンテナを使って植物工場を作ろうと思っていたが、コンテナは建物扱いになってしまうため、設置することができなかったのだ。

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