
この点に関連し、河鰭教授が研究者らしい説明を加えてくれた。「レタスは根っこを除けば、LEDの光で作った葉っぱを100%収穫できる。トマトは葉っぱがたくさんできても、捨てるしかない。それだけたくさん光合成のためのエネルギーを投入する必要がある」。解決するには、LEDの性能の向上と低廉化が課題になるのは当然だが、この施設のように建設と運営の両面でコストを下げることも、作物の幅を広げることに貢献するだろう。
「農地」のままで建てられる
キャンパス内の施設では、すでにレタス、コマツナ、水菜、ホウレンソウ、カラシナ、ケール、キュウリ、ミニトマト、イチゴなど、「手当たり次第に何でも作ってみた」(湯川代表)。既存の植物工場でもこうした作物を作ることはできる。問題はその多様なポテンシャルを発揮することができない収益構造にある。プランツラボラトリーが課題を解決できるとビジネスで証明したわけでないが、植物工場の新たな可能性を示したとは言えるだろう。
建設コストのほかにも、既存の植物工場にはない特色がある。普通の植物工場は床にコンクリートを敷いた頑丈な建物のため、農地には建設できない。もし農地に作ろうと思えば、宅地に転用することが必要になる。その場合、ネックになるのが、地主が転用を嫌がるケースがあることと、たとえ転用することができても、固定資産税の負担が跳ね上がることだ。もともと宅地なら転用の必要はないが、当然ながら田畑と比べて税負担ははるかに重い。
農地を「耕すことのできる土地」に限定している現行ルールを見直すべきだと筆者は思っているが、プランツラボラトリーの場合、そもそもそういう問題が発生しない。基本はビニールハウスと一緒なので、農地のままで建てられるからだ。逆に言えば、既存の植物工場とは違い、一面が舗装された消費地のど真ん中に建てるような施設ではない。
ここからも、両者のビジネスモデルに違いが出る。既存の植物工場は建屋を複数階にし、単位面積当たりの栽培棚を可能な限り増やし、1日に数千から数万株を出荷して売り上げを増やす。これに対し、ビニールハウス型は棚を上に積み上げるのに限界がある。そこで、「上に伸ばすのではなく、横に広げる」ことで、生産量を増やすことが必要になる。高齢農家のリタイアで農地の集約が進んでおり、「横展開」は以前よりずっとやりやすくなっている。
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