よくストーリーを背景に売ればいいと言われますね。

 「簡単じゃないですよ。うちのスタッフがみんな集荷をやっているのが理想ですけど、難しい。集荷研修というのをやって、アルバイトも含め、自主的に定期的に農家を回るというのはやってますが。基本的には一人ひとりが野菜に関心を持っているかどうか、人と人をつなぐ仕事をしているという認識を持っているかどうかが大事です」

うまくいかなかったことはありますか。

 「袋のなかに便箋みたいなものを入れておいて、『農家に手紙を書いてくれたら10円引きますよ』ってことを1年ほどやってました。野菜で10円って大きいじゃないですか。でも、意外に書いてきてくれなかったんです。忘れちゃったり、面倒だったりするんですかねえ。その場で書いてもらうなら、べつかもしれませんが、食べずに、見た目だけで書いてもらっても困るんで」

 「ある焼鳥屋のチェーンがあって、バーコードで読むと、だれが育てた鶏かがわかるようになってます。でも、お酒飲んでるところで、そういうことやる?みたいな。なかなか難しいですよね」

農家としての名刺を

今後の課題は何ですか。

 「農業経営のサポートをもっとやっていかなければならないと思ってます。もっと商人になってもらう必要があるということです。もっと効率よくつくって、販路を開拓する。うちが販路のすべてになれればいいですが、うちでは全部とれないんで。極端な話、『全部うちがとります』って言って、うちがつぶれたら、都市の農家が全部つぶれちゃいますっていうのでは困るんです」

 「だって、名刺さえ持っていない農家がたくさんいますからね。持っていても、農業委員会の名刺だったりとか。そうじゃなく、農家としての名刺をまず持ってほしい。名刺にはメールアドレスを書き込んでほしい。そういうところからなんです。肥培管理の方法とかは、農家はわかっていますが、大切なのは商人道の基礎をわかることです」

 「『上澄みの農家』という言い方をしてますが、いい商品をつくって、営業力もある農家と、その下の中堅クラスの農家との差が激しいんです。上澄みの農家に会ってもらうだけで違うのか、でも、ただ畑を見に行くだけではだめで、『まねできない』で終わってしまいかねません。農家の交流組織をつくらないといけない。それが将来的にうちの力になるんです。まずは、みんなでお酒を飲みに行くところからですかね」