都市農業の意義は、食料の生産基地としての地方の農業と違いますか。

 「かもしれないですね。不動産収入の多い農家の場合、所得よりも、農業にやりがいがあることが重要。それをうちの集荷担当が担保していくんです。でもそれって、自分がつくったものが『おいしい』って言ってもらえるっていう超単純なことなんです。近くに住んでいる人の生活に密着してるって感覚は、捨てがたいんじゃないでしょうか」

「背景流通をやろう」

地元の野菜を集荷し、売る強みは何ですか。

 「厳密に言えば、『地元だから買いたい』っていう消費者はそんなにたくさんいるとは思ってません。そういう人はありがたいお客様ですが、食べ物って最終的には理性ではなく、舌で買うものです。基本は質と鮮度です。質は、全部が全部、ほかの地域の野菜よりおいしいというわけじゃなくても、いくつか突出しておいしいものがあるってことです」

 「もう1つは、情報です。農家の顔が見えるといっても、袋に名前が書いてあるだけじゃ足りなくて、『背景流通をやろう』って言ってます。背景を流通させるんです。情報は動かさず、ものだけ動かしてるのがいまの農産物流通なのに対し、うちは集荷しているので、情報を動かすことができるのが強みです」

 「例えば、『この農家はお婿さんで、もともと自動車修理をやってたんですよ』ってこととか、『このシイタケ農家は、以前はリニアモーターカーの研究をしていたんです。シイタケの菌床づくりは、科学的なPDCAのくり返しみたいで、性に合ってるんでしょうかねえ』とか。あるいは、『すごく寡黙なおじいちゃんで、朝早くから働いてるんですよ』って話は、名前だけ書いてあってもわからないじゃないですか」

 「農協の直売所では難しいんです。定員がレジに立っているだけでは、できない。ふつうの直売所ってすごくもったいなくて、レジ係の人が情報を持っていないから、料理方法の話ぐらいしかできないんです。うちは小型のフェーストゥーフェースの店で、集荷もやっているからできるんです」