ここで考えるべきは、なぜ全農が「直接販売を9割に増やす」という数値目標を掲げることができたかにある。「目標は高ければ、高いほうがいい」といった単純な話ではない。

 背景にあるのは、コメの消費環境の変化だ。この連載でもくり返し指摘していることだが、家庭で食べるコメの量は減る一方、コンビニの弁当やおにぎり、レストランなど中・外食の需要は堅調に推移している。

キーワードは「安定」

概算金米価からの脱却が求められている
概算金米価からの脱却が求められている

 スーパーでコメを買うとき、消費者は棚に並んだいろんなコメと、財布の中身を見比べて、ほどよい値段のコメを買う。スーパーにすれば、特売用のコメからブランド米の間でいかにバランスをとるかが商売の妙味になる。

 一方、中・外食企業は値段をスーパーほど柔軟に変えることが難しい。「定価」を頻繁に変えてしまうと、ビジネスが成り立たないからだ。彼らが求めるのは、量の確保と値段の安定。これに対応しようとするのが、全農の直接販売だ。

 コンビニやレストランとじかに接することで、どんな品質のコメを、いくらの値段で、どれだけ欲しいかという情報をキャッチする。それを産地に伝え、生産計画を立ててもらう。「マーケットイン」という言葉がビジネスの世界で言われて久しいが、農業、とくにコメの実態は理想にはほど遠い。これを改めようという発想が、全農の自己改革案の根っこにある。

 こう書くと、きれいごとと感じるかもしれないが、全農側にも危機感がある。補助金でコメの生産調整(減反)を強化したことで、2015年、16年と続けて米価が上がった。「農家はそれでハッピー」と思うかもしれないが、コメ消費の減退に拍車がかかるという副作用を伴った。

 高齢化と人口減少で、コメは消費が減り続けている。それに歯止めをかけるには、「米価が上がって農家が喜ぶ=実需者が困る」という状況も、その逆も起きないようにすることが必要になっている。両者がウィンウィンの関係になるためのキーワードは「安定」だ。

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