まずは、いま中心になっている取引方法を確認しておこう。農家から農協、農協から全農、さらにコメ卸へと取引は流れるが、コメの所有権は卸が買うまで農家から移転しない。委託販売と呼ばれる方式だ。

 この方式には以前からいくつかの問題点が指摘されていた。価格変動などの販売リスクを負っているのは農家で、農協と全農はリスクを負わずに販売手数料を受け取ることができる。農家はコメを出荷した段階で仮払金(概算金)を受け取るが、最終的に代金が確定するのは約1年半後。農家にとってみれば、厳密な収益管理をするのが難しい方式だった。

 生産現場がコメの需要をつかみにくいという難点もあった。全農から卸にコメが渡ったら基本的に取引はそれでおしまいで、その先、誰がいくらでコメを買っているのか、全農も農協も農家もわからないことが多かったからだ。

肝心なのは、全農の“詰め”

全農などが入居している東京・大手町のJAビル
全農などが入居している東京・大手町のJAビル

 以上と対比すると、新しい方式の意味が浮き彫りになる。まず、委託販売ではなく、買取販売を中心にするので、リスクの一端は全農が負うことになる。全農と農協との間が買い取りになれば、農協も農家との間で買取販売を増やしやすくなる。

 代金の決済方法は3種類ある。1つは、農家が農協に出荷した段階で、所有権を全農に移転させ、まとめて代金を払う方法。もう1つは、農協の倉庫からコメを出荷する度に代金を払う分割決済。最後の1つが、これまで通り、秋に概算金を出し、その後、3~4カ月程度で精算する方法だ。同じ方法で農協が農家に代金を払えば、農家が概算金を受け取ってから1年半、売り上げを確定できない現行方式と比べ、農家の資金繰りにプラスに働く。

 直接販売は、これと呼応する取り組みだ。委託販売と違い、買取販売は全農が一定のリスクを負う。そこで、「卸に売ったらおしまい」という卸まかせの姿勢ではなく、確実に売り切ることが必要になるからだ。

 注釈が必要だろう。直接販売とは言っても、必ずしもコメ卸を外し、直接その先に売ることを意味しない。肝心なのは、全農が直接、「実需者」と接し、取引の内容を詰める点にある。実需者は消費者との接点にある業者を指す。

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