農業の現場と言っても、「現場」にはいろいろある。田んぼや畑や栽培ハウスでの農作業はもちろん、企業的な経営が求められるようになったいま、販路の開拓や加工場も現場の1つといえる。今回取り上げるのは出荷の現場。買い手からみれば、集荷になる。

都市農業の応援団

 取材対象は、東京都国立市や国分寺市などにある青果物店「しゅんかしゅんか」の集荷の様子だ。全国から農産物が集まるスーパーとは違い、地元の農家の野菜を中心に販売している。東京都内という店舗の立地上、都市農業の応援団という側面もある。

 農家が農協などを通して市場に出荷するふつうの流通と異なり、「しゅんかしゅんか」は仕入担当が日々、必要な野菜を仕入れている。農家を一軒一軒訪ねるこのやり方は、一見非効率にみえる。

 同店を展開するベンチャー企業、エマリコくにたち(国立市)の代表、菱沼勇介さんによると、集荷の意味は2つある。1つは、駅前という立地による制約だ。人の往来が多い小さな青果物店に、仕入れ先の農家がみんな軽トラで乗りつけて、納品するのは事実上不可能。交通を妨げて、クレームが出る恐れもある。

 だがこれは、集荷をする消極的な要因。もっと大きいのは、「農家とのコミュニケーション」だ。生産者やその家族と仕入担当が直接接することで、生産者の情報を消費者に伝え、消費者のニーズを生産者に伝えることが可能になる。この双方向の交流を通し、店の品ぞろえと畑の風景が変わってくる。

 「集荷に同行してみたい」。菱沼さんにそう相談すると、入社ほやほやの山川武士さんを紹介してくれた。多摩センター三越(東京都多摩市)の地下1階に最近、出店した「しゅんかしゅんか」と、京王線高幡不動駅(東京都日野市)の近くのスーパーへの納品を担当している、25歳の若い仕入担当だ。

 待ち合わせは、高幡不動駅の改札で午前10時半。「わりとのんびりしたスタートだな」と思っていたら、筆者の完全な勘違いだった。

エマリコくにたちの山川武士さん㊧。青木克訓さん、母の幸子さんの親子の農家を集荷で訪ねた(多摩市)