そのとき、企業がやっているように、ピラミッド型のやり方で誰かが指示するのが正義だみたいな話になりつつありますが、昔はそうじゃなかった。相当長い期間、そうじゃないやり方でうまくいってきたし、それが農業に合っていると思うんです。ピラミッド型では結局、指示しきれなかったり、仕事のモチベーションを維持するのが難しくなったりします。

 農業って成果が長期的にしか出てこないし、天候次第で状況が変わってしまったりするから、誰かが指示を出し、その通りやるのが基本というやり方は適していないと思います。昔のやり方が100%よかったって言うつもりはありません。でも、うちは何を目指してるんだろうって考えてみると、昔の集落の共同作業の仕組みの「結(ゆい)」みたいなものだと気づきました。

 みんなが一人ひとり自分で考えてやる。手が足りないところがあれば、手伝う。全員が同じ仕事をできるわけじゃありませんし、得意、不得意もあります。でも、べつに誰の仕事とか固定的に決まっていなくて、たまたま今のメンバーでこういう状況だから、担当が決まっているだけ。自由に「おれこれ得意だからやりたい」って言ってもいいし、「これ苦手だけど、うまくなりたいからやりたい」というのでもいい。

 そういうほうが組織として柔軟性があって、強いと思うんです。


「作業の進捗状況は、各担当が紙や頭の中で管理している」という言葉を聞いて、どう思うだろうか。もしかしたら、それで大規模農場を運営するのは「あまりにも大ざっぱ」「アナクロニズム」という感想を抱く人もいるかもしれない。もし、これを数ヘクタールや数10ヘクタールの経営者が言ったのなら、そういう受け止め方も妥当とみるべきだろう。

 だが、横田農場は142ヘクタールと全国的にも有数の大規模経営で、しかも革新的な作業体系の確立を理由に、農家にとって最高の栄誉である天皇杯も受賞している。九州大学の研究者と組み、田んぼに自動で水を供給するシステムを開発するなど、様々な新しい技術にも挑戦している。

 その彼が「目指すのは、昔の結のような組織」「結局は人」という結論にたどり着いたことを、「時代遅れ」と短絡すべきではない。これから先、農業は完璧な環境制御を目指す栽培施設と、システムを活用しながらも、大自然のもとにある広大な農場を人に宿るノウハウで管理する土地利用型農業の2つの極の間で進化していくだろう。そして、それぞれの極にとって必要な技術は異なる。

 次回は、横田さんが自律分散型を志向するにいたった背景にある家族関係をお伝えするとともに、「人の成長こそ経営の最大の武器」という発想について深掘りしてみたい。

新たな農の生きる道とは 『コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売