農業にはテイストの異なる2つのテーマがある。1つは、AI(人工知能)を活用したスマートアグリや植物工場など、新しい技術によってこれまでの食料生産の限界を突破しようとする農業だ。分野で言うと、施設園芸がその典型。主要企業による様々な農業関連ビジネスもこの文脈の中にある。

 もう1つが、新しい技術を活用しながらも、なお生産者の栽培技術の向上に多くを依存する農業だ。稲作をはじめとする土地利用型農業がここに分類される。両者は完全に分断されているわけではないが、栽培の隅々まで制御することを前提に稲作の未来を考えることは難しい。

 今回取り上げるのは、この連載の「常連」の1人で、茨城県龍ケ崎市で稲作を営む横田修一さんだ。最近紹介したように、横田さんも田んぼの自動給水機の開発に参加するなど、新しい技術の導入には積極的。だが、その前提として「それでも農家が自分で田んぼを見に行く」ということを大切にしていた(7月13日「『がっかりな』機械に記者たちが感心した理由」)。

 その取材を踏まえ、「現代の篤農」とでも言うべき横田さんにどうしても聞いてみたいと思ったことがある。自らの経営の全体像と稲作の未来をどう考えているかということだ。ここ数年、横田さんには技術面を中心にインタビューしてきたが、今回は営農のあり方について質問してみた。

「結(ゆい)の復活」を目指す横田修一さん

横田さんにはこれまで、大規模経営に必要な技術のことを中心にお話をうかがってきました。

横田:正直言って、もう規模や面積の話って語る必要ないと思ってます。確かに、規模が大きくなればそれに合った技術が必要になります。従来は10~数10ヘクタールの技術体系しかありませんでした。その規模の機械設備をいくつも用意して、100ヘクタールや500ヘクタールをやろうとしてもだめで、効率はよくなりません。うちの場合、状況が変わってきたから、今までにない技術が必要だよねってことで、開発してきました。

 じゃあ、規模拡大しないと将来がないんですかって言うと、まったくそんなことはないと思ってます。大きくなければこれからの農業が成り立たないかと言うと、そんなことはない。規模拡大は結果です。この地域も当然、高齢化で農家が辞めていってますが、ほかにやる人がいないから、「横田、おまえやってくれ」っていう話になったんです。

 自分で言うのもなんですが、小さいころから周囲に「農業やる」って公言して来ました。そうすると、「横田家の修一は百姓やるらしいぞ」「あいつなかなかできたヤツだ」と思ってもらえて、実際にやり始めると「それなりに一生懸命やってるみたいだ」「あいつだったら、うちの田んぼ任せてもいい」となって、結果的に田んぼが増えていったんです。

 20年前に農業を始めたときは、20ヘクタールでした。当時としては大きかったけど、ではここまで規模を拡大しようと思ったかというと、想像もしていませんでした。いま142ヘクタールですから、当時の7倍です。その間、自分たちでできることを一生懸命やってきただけです。

九州大学と共同で開発した自動給水機