日本はどう対応すべきでしょう。

山田:中国で何らかのリスクが発生したり、東アジアの緊張が高まったりして、輸送ルートが制限され、輸入できない農産物が出たらどうするか。試されるのは、食料安全保障の質だ。その点、日本の農林水産省は今後どういうリスクがあり得るのかをよく分析し、ウオッチしていると思う。課題は、様々なリスクへの対応策をいかに具体的に考えるかにある。特定の農産物を輸入できなくなったとき、他の調達先からどういうルートで持ってきて、国内のどの港から入れて、そのあと、国内でどうやってさばくのか。

 リポートでも提言したが、民間企業、ビジネスパートとのかかわりをもっと強化すべきだろう。政府と民間企業、生産者、消費者を巻きこんだ専門チームを作り、国民を巻きこんで議論する。民間の役割を重視しながら、外部チェックを含めたPDCAサイクルを定着させることも必要だ。

 国内の生産力に関して言えば、高齢化で生産者が相当減ってきている一方、消費者に求められ、経済的にも成り立つ元気な生産者も増えている。そこをもっと伸ばせばいい。課題はまだボリューム的に大きい農協系統の生産者だが、そこがシステマチックに労働生産性を高め、コストを下げる余地はまだ十分にある。デジタルを使ってすぐ飛躍的に伸ばすといった話ではなく、そこにいたる前の段階でできることがたくさんあると思う。

食料自給率4割の日本が考えるべき2つのこと

 冒頭で「様々な企業の農業関連ビジネスと同じ文脈にある」と書いたのは、今のままでは日本人の食生活の維持に黄信号がともるという危機感を共有しているからだ。だが、そこはマッキンゼーらしく、グローバルな視点から食料問題について語ってくれた。国内の生産基盤を守るのは当然必要。だがそれだけでは、日本人の食生活の水準を保つのは不可能だからだ。

 山田氏が指摘するように、不安定要因の1つに中国がある。広大な国土が与えるイメージとは違い、耕地面積は国民1人当たりにすると狭く、優良な農地も不足している。それでも中国は、14億近い人口を養うには輸入に頼るのは不可能と考え、主食のコメや小麦を中心に「絶対的自給」の方針を貫いてきた。そして、たしかに中国はここまで「かなりうまく」やってきた。

 問題は、中国にとってはささいな変化でも、世界にとって激震となりかねないスケール感にある。これまで国際相場の高騰は、オーストラリアなど輸出国の不作がきっかけで起きた。では、中国で不作が起きたとき、世界にどんな影響を及ぼすか。第2位の日本をはるか下に見下ろす世界一の外貨準備保有国の中国は、世界から穀物を買いあさる資金量がある。

 危機をあおることと、多様なリスクシナリオを考えることはまったく別物だ。食料自給率が4割の日本は、「足りなければ輸入すればいい」という感覚がかつてあった。だが、今や「買い負け」を想定して国内の生産基盤を守ることと、国内では絶対まかなえない農産物を、いざというときどこからどう調達するのかの2つを正面から考えるべき時期にきている。