変化する食料問題を左右する要素

世界の食料事情に変化は起きませんか。

山田:食料問題を左右する要素は今後相当変わってくる。1つは、ボラティリティー(変動率)が大きい世界になる。

 2008年に穀物の国際相場が高騰したのは、米国で大量のトウモロコシがバイオ燃料に回り、オーストラリアで干ばつが起きたことが発端だ。そこに、原油価格が上昇してサプライチェーンのコストが上がる中で、金融市場から穀物市場にマネーが集まり、副次的な効果でどんどん穀物相場が上がっていった。マーケットのボラティリティーが高まっており、今後ああいうことが起きる可能性はある。これは短期的に見ていくべき問題だ。

長期的に見るとどんな変動要因がありますか。

山田:気候変動などの環境的なリスクも考える必要がある。世界の農業地図はすでにかなり変わってきている。かつては穀物の生産地は米国が中心だったが、この15年くらいで南米の地位が上がってきていて、さらにウクライナも存在感を増している。それも今後大きく変わる。

 例えば、ロシアなどが伸びてくる。北極圏の氷が溶けると、港を活用した巨大な輸出地帯があの辺りにできる。ロシアの北極圏にある地域や極東から輸出できるようになるといったダイナミクスを見る必要がある。

 そうした変化に対応し、北半球では、日本企業は北極圏まで含めて食料基地ととらえ、課題にかかわっていったほうがいい。一方、南半球では、オーストラリアが水不足に陥るリスクがある。日本企業はそれをビジネスのチャンスととらえ、水の効率的な利用や灌漑などの技術で貢献する形で変化に絡んでいくべきだと思う。

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