農業の衰退を防ぐため、企業の力に期待する声は昔もいまも多い。一方で、局面を大きく打開するような成功例がほとんどないのも相変わらずだ。
なぜ企業参入はうまくいかないのか。企業が農業部門を軌道に乗せるには何が必要なのか。かつて工業用ガス大手のエア・ウォーターで、トマトの栽培ハウスの立ち上げを担当していた太田房江参院議員に話を聞いた。
太田氏は経済産業省出身。全国初の女性知事として大阪府知事を8年務めたあと、エア・ウォーター農園の代表を経て、参院議員になったという異色の経歴を持つ。
自然との闘いは難しい
農場経営をやってみて何を感じましたか。

「自然との闘いは難しいね。自然に逆らうようなことをやっても、大きな効果はないと思いました」
「北海道千歳市のトマト農場を2009年に買うところから数えて、3年ほど関わりました。(買収したときは)ガラスの城が壊れた廃虚みたいな状態でした(注1)。その後、2011年には、第三セクターが運営していた長野県安曇野市のトマト農場も買いました。こちらは経営はうまくいっていませんでしたが、まだ人がいてトマトをつくっている状態で買いました」
利益は出ましたか。
「安曇野は北海道ほど気候は厳しくなく、企業の経営ノウハウを入れることで極めて早く黒字化できました。一方の千歳は通年栽培を売りにしていたから、雪の深い冬もがんがん暖めてつくり続けた。エネルギー費がかさんで、なかなか黒字転換できませんでした」
「千歳も最近、黒字転換したようです。コストをかけずに手がけるにはどうしたらいいかをずっと考え続け、冬にものすごいコストをかけてつくるよりは休止したほうがいいというシンプルな決断をしたようです(注2)」
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2019.1.11更新
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