ササニシキが使われているのは、一部の高級店などで、そういう市場はまずカルローズとは競合しない。まともにバッティングするのは、スーパーやコンビニのすし、回転ずし、町のふつうのすし店になるだろう。そして、そういう場所で使われているのは、はえぬきやコシヒカリだ。少なくとも、今回の調査で見る限り、はえぬきとカルローズとのあいだに品質で大きな差はなかった。

 いや、1つだけはっきりとした違いがある。値段だ。日本炊飯協会が今回の調査で買ったコメの価格は、はえぬきはカルローズより5割高く、ササニシキは7割高かった。食味に大きく差があるならともかく、ほとんど同じならどちらを選ぶだろうか。

 冒頭で、日本人の国産志向に触れたが、それはじつは心もとないものだ。2011年の東日本大震災をきっかけに米価が上がったとき、外国産米の輸入が急増し、12年まで2年続けて上限の10万トンに張り付いた。日本人が外国産米に拒否反応を示すかどうかの“社会実験”はすでに終わっているのだ。

米価維持が正解か?

 ここで、農水省の説明に戻ろう。同省は、TPPで海外から新たに入ってくる分だけ、コメを買い上げて備蓄に回すことで、影響を遮断するとしている。だがこれは、輸入したコメを備蓄用に買い上げるという意味ではない。つまり、国産米より安い以上、カルローズなどが入ってくれば米価には下方圧力がかかる。そしてくり返しになるが、見た目も品質も国産米と大差はない。

 では、もしTPPが発効し、輸入米の米価への影響が顕在化したら、農政はどう対応するのだろうか。主食のコメを家畜のエサに回すことで需給をタイトにし、米価を維持することに躍起になっているのが農政の現状。その延長で考えれば、もっと需給を引き締めて、米価の下落を防ごうとするだろう。

 もちろん、米価が高止まりすれば、安い外国産米への需要が高まるが、輸入枠には上限がある。たとえ国産のシェアの一部を外国産に奪われても、米価を維持することで、農家の所得を守ろうとするのがいまの農政の発想だ。