グローバルGAPは20年前に欧州で誕生した。国境を越える「顔の見えない農産物」が増えたことを受けて生まれた農産物生産のルールだ。農場で働く人と作物の安全を確保し、環境破壊を防ぐための方法を細かく定めている。福永社長は「『自分のやっていることを信じて』と言っても通用しない。国際基準に準拠する必要がある」と話す。

グループの先頭を走る

 しかも、イオンは4月の発表で、農産物の売上高に占める有機栽培の比率を5%に高めることも宣言した。GAPの取得と有機栽培の両面で、イオンアグリ創造はグループが目指す方向の先頭を走ろうとしていることが鮮明になる。数量が限られる中で、質の面でグループが扱う農産物のベンチマークになるというのはそういう意味だ。

 もし農業が、企業がやればすぐ利益が出るほど簡単な仕事なら、そもそも企業参入など必要とはしないだろう。現実はそうではないから、「企業的なもの」を農業が取り入れることが課題になる。それに応えるのは、企業参入なのか、それとも家族的な経営から企業的な経営へと脱皮した農家なのか。

 そうした中で、イオンは有機栽培という既存の農家もめったにやりたがらない方向へと一歩を踏み出した。農薬と化学肥料を禁じ手にすることは一見、「企業的なもの」に反するようにも見える。だが、グローバルGAPの取得を含めてそれは突飛な試みではなく、グループ全体の戦略と連動していることが、イオンの今回の発表で明確になった。

 福永社長は「愚直にやってます」と強調する。イオン農場の野菜がグループの売り場を埋めつくすことはできなくても、売り場を代表する農産物としてのブランドの地位を確立し、グループが扱う農産物全体が目指すべき目標になることで、その努力は実を結ぶ。

「愚直に農業をやってる」と話すイオンアグリ創造の福永庸明社長
「愚直に農業をやってる」と話すイオンアグリ創造の福永庸明社長
新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

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