肝心なのは、そういう挑戦を現場が続けることで、イオンの農業事業にどんな可能性が見えてくるかにある。イオンアグリ創造の福永庸明社長は「最終的には全部有機栽培にひっくり返せたらいいよねって社内で話してます」という。だが、ひっくり返せる範囲は限定的だ。大手流通グループのイオンが使う野菜をすべてまかなうことは、直営農場と約60の契約農家の両方を合わせても可能なことではない。

 これは、大企業の農業参入に共通する課題だ。既存の農業が高齢農家の引退や耕作放棄の増大という深刻な問題を抱えていることを受け、解決の一助になろうと参入する。だが、始めてみてすぐ、外から見ていたときほど問題の解決が容易ではないことに気づく。

量ではなく質

 その点、イオンの場合は青果物バイヤーの教育の場としても直営農場を位置づけていたため、次の展開を考えやすかった。直営農場を核にして、契約農家を増やすことにしたのだ。自ら農場を運営し、農作業の難しさを理解したうえで、周辺の農家と安定した仕入れ関係を築こうとした(2014年4月25日「嘘のつけない関係になろう」)。

 くり返しになるが、それでもグループの店舗の棚を埋めつくすことは難しい。結論はひとつ。追求すべきは、量ではなくて質。ただし、普通の人が手を出しにくいような超高級品を作っても、売り場では例外的な存在にしかならないし、スーパーにはなじみにくい。そうではなく、目指すべき方向は膨大な量の食材を扱うグループの中で、品質の面でベンチマークになることだった。

 その方針は、イオンが4月に発表した農畜産物の調達方針ではっきりした。目標年次は2020年。プライベートブランドの100%で、農産物の生産方法の国際基準「農業生産工程管理(GAP)」の認証の取得を目指す。そして、イオンアグリ創造は直営農場も契約農家もグローバルGAPを取得することを条件に、業容を拡大してきた。

グローバルGAPの取得で農薬の管理はとくに重要(埼玉県羽生市)
グローバルGAPの取得で農薬の管理はとくに重要(埼玉県羽生市)

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