小祝さんの説明の核心部分は3つある。まず有機肥料を菌が分解する過程でガスが発生し、土を砕いて軟らかくする。無機物ではなく、有機物を肥料に使うので、タンパク質や炭水化物を省エネ、つまり天気があまりよくないときでもつくることができる。そして、バランスのとれた土中のミネラルが、上記の2つのプロセスを円滑にする。

 飯星さんによると、初めて小祝さんの説明を聞いたときは、「化学記号がたくさん出てきて、ちんぷんかんぷんだった」という。だが、次第に考えが変わっていった。「理解したほうが、何でこうなるのか、どこが悪いのかが、わかるようになる」。

土壌分析の方法を指導する(千葉市)

第三者の厳しい目で

 小祝さんは「種明かしは簡単。足し算してるだけだから」と強調する。だがもちろん、それを現場の畑の作業に落とし込むには、土壌分析を通した緻密な施肥設計が必要になる。植物の状態や天候を観察して、微妙な変化を察知し、タイミングよく作業を進める技量も要る。農業は実験室のなかでの出来事ではなく、畑を舞台にした現場の作業だからだ。

 ちなみに、小祝さんたちは糖度やビタミンの高さを感覚的に語っているわけではない。第三者機関に検査を依頼し、データで検証している。その機関に取材すると、有機栽培がふつうの栽培方法よりいいデータが出るとは限らないが、小岩さんの指導を受けた農家には、高いデータが出る傾向があるという。

 畑の状態から作物まで、数値で検証する――。根気強く科学的に考えていけば、いままで無理だとあきらめてきた壁を突破できるかもしれない。いい意味で「目線を上げる」ことが、農業の可能性を引き出してくれるだろう。

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