逆に有機肥料をうまく使えば、作物の質が高まりますか。

 「窒素からアミノ酸を合成し、さらにタンパク質をつくるには大きなエネルギーが要る。だから、無機肥料を使う通常の栽培方法だと天気が悪いときは、生育がストップしてしまう。これに対し、アミノ酸の段階で吸っている場合は、タンパク質まですぐそこなので、天気が悪くても、生育がうまく進むんです」

 「さらにアミノ酸以外に、腐植酸などの有機酸も吸うことで、それが光合成の回路に入り込み、天気が悪くても光合成できる。その結果、炭水化物がつくられて、糖度が上がる。種明かしは簡単なんです。足し算してるだけだから」

 「糖度が上がるということは、野菜の味以外にも意味があります。糖分は脱水すると、油脂、つまりワックスになる。糖分が多くなると、ワックスになる確率も高まる。ワックスは、細胞の隙間を埋めて、植物のにおいが外に漏れないようにする。においが漏れないので、昆虫がどこにエサがあるかがわからなくなる。私が教えている農家には大規模経営も多いので、防虫ネットを使うなど物理的な防除には限度がある。害虫に野菜が発見されないことが一番なんです」

論理的で科学的な農業を

この方法は、必要な成分をたえず土に入れることになりますね。

 「それが農業です。農的な暮らしがしたいなら、自分でつくったものを食べて、ふん尿で戻せばいいが、農業はそうはいかないんです」

作物の栽培方法には、農薬や化学肥料を使う慣行栽培、農薬と化学肥料は使わないが、有機肥料は使う有機栽培、さらに有機肥料さえも使わない自然栽培があります。自然栽培派のなかには、有機栽培を批判する人がいます。

 「(田畑にまったく何も入れないという意味での自然農法は)成り立ちませんよ。自然農法で有名な農家がいて、私の知り合いのところに液肥を取りに行きました。連絡があったので、『その人は何も入れないって言ってるんだから、絶対に渡しちゃダメだ』と言いました」

有機肥料を入れすぎて、土壌を汚す有機農家がいるという非難があります。

 「そういう人もいるという話です。過去何百年も日本の農家がやってきたことを、あれは汚らしいやり方というイメージを植え付けるのは、論理的ではありませんよ。彼らは、なぜそうなのかと聞いても、論理的に説明せず、すぐ感情的にばあっと来る。科学を使わないと、雰囲気で語ってるだけで、何の再現性もないんです」