農家への指導はどうやって始まったんですか。
「こういうことを農家に説明しても、理解してもらうのは難しい。そこで、必要なものを仕込んだ堆肥をつくり、知り合いの農家に使ってもらいました。数週間で土が軟らかくなり、『何が起こったんだ』ってことになりました。堆肥を入れたところが、パンのようにふくれたんです」
「そうこうしているうち、地中の硬盤を水が抜けなくて、雨が降ると水がたまってしまうという話が来ました。そこで、土の上にビニールを敷きました。発生したガスが外に逃げられなくなり、水をどんどん下に押し下げる。太陽熱で温められた蒸気も同じ働きをします。菌のついた水が硬いところにしみこんでガスを発生させ、硬盤を砕く」
炭水化物が不足、味も栄養価も上がらない
化学肥料がない時代と共通点はありますか。
「昔の農家がやっていたのと同じことです。昔はいまほど野菜の流通が発達しておらず、食べたものはふん尿の形で戻ってきたので、ミネラルが地域内で循環していたんです。川が氾濫すれば、リン酸やカリウム、マグネシウム、アミノ酸が畑に入る。山からも来る。昔は物質の循環が正常だったから成り立ったんです。エコサイクルです」
「いまは、窒素、リン酸、カリウムの3大要素だけを入れればいいということをやっているので、畑の土の栄養素が減ってしまったんです。せいぜい入れるのは石灰やマグネシウムです。一方で、窒素は入れるから、体のもとになるタンパク質はできて、細胞が大きくなる。すると、光合成でできた炭水化物が細胞壁に使われてしまう。その結果、糖分やビタミンに回す炭水化物が不足し、味も栄養価も上がらなくなるんです」
[コメント投稿]記事対する自分の意見を書き込もう
記事の内容やRaiseの議論に対して、意見や見解をコメントとして書き込むことができます。記事の下部に表示されるコメント欄に書き込むとすぐに自分のコメントが表示されます。コメントに対して「返信」したり、「いいね」したりすることもできます。 詳細を読む