農学では長年、植物が吸収できるのは窒素やリン酸、カリウムなどの無機質で、アミノ酸のような有機化合物は吸収しないとされてきました。

 「研究所で植物の組織培養をやっていました。テーマは、細胞をつくるタンパク質がどうやってつくられるかです。無機の窒素ではどうしても細胞分裂が起きにくいのに対し、アミノ酸を吸わせると高分子化合物のタンパク質がスムーズに合成されるんです」

 「ただ、牧草を育てようと思うと、アミノ酸だけではうまくいきませんでした。ミネラルが土のなかにバランスよくないと、光合成がうまくいかず、炭水化物をつくれないんです。タンパク質があって細胞ができて、体が大きくなっても、栄養が足りない状態になります。オーストラリアでの3年間の経験がなければ、いまの私はありません」

酵母菌と砂糖水を入れて練り込んだら…

水はけがよく、通気性のいい土が重要だと強調していますね。

 「物理的に植物の根っこが成長しやすくするためです。帰国したあと、畑にアミノ酸とミネラルをまくと、なぜか土が硬くなってしまったんです。だから、植物が根を張ることができない。肥料として間違いないものを入れているはずなのに。でも、森林の土はすごく軟らかい。それはなぜなのか」

 「ふと思ったのは、土のなかがパンみたいにふくれたら、土が軟らかくなるはずだということです。ガスがわく菌は酵母菌だということで、熱帯魚の水槽を買ってきて、硬い粘土を入れ、酵母菌と砂糖水を入れて練り込んだら、土がぼこぼこ浮き上がってきました。これだと思いました」

 「でも、野生で酵母菌そんなにいたっけと思い、調べてみるとそんなにいない。そこで、土のなかで深さによってどんな菌がいて、どんな働きをしているのかを調べました。酵母菌の働きをよくする菌もわかりました。発酵で二酸化炭素のガスを出して、土を軟らかくする菌のリレーです。みんな実験器具って高価なものだと思っていますが、圧力釜や水槽でもできるんです」