今回の内容は、田んぼに水を引き込む自動給水機を紹介した最近の記事(7月13日「『がっかりな』機械に記者たちが感心した理由」)に通じる。優れた生産者は自分たちが必要なものを、現場目線で自ら作り上げる。たとえ自作できなくても、メーカーに任せずにアイデアは自ら出す。

農家が判断すべき部分は残る

 それは、メーカー主導で開発する様々な機械と比べると、ローテクに見えるかもしれない。農家だけの力では到底開発できない高度なシステムもたくさんある。だが一方で、農家が自作できる領域もまだまだ農業の世界には残っている。システムを売るのが目的ではないので、当然安上がりになる。

長嶋さん自作のマイコン。室内環境を制御する
長嶋さん自作のマイコン。室内環境を制御する

 「現場目線の大切さ」という意味では、ゼロアグリにも同じことが言える。たしかに、植物への養液の供給は農家が判断するのではなく、システムに相当な部分を任せることが可能になる。だが、生き物が相手で、土の上で作っている以上、どうしても農家が自らの目で見て判断すべき部分は残る。そこは、経験の差がものを言う。

 「ゼロアグリを使って自分がスキルアップし、この1年でものすごく経験値をもらいました。まだ伸びしろがあるので、楽しく仕事できます」

 長嶋さんは取材でうれしそうにこう語っていた。生産者にとって、極上の喜びと言うべきだろう。