大手企業が野菜ではなく、コメに参入する例は珍しい

 この点に関し、三井住友銀の計画は、いきなり大型のライスセンターをつくったりしないなど、「小さく産んで、大きく育てる」という発想から出発している。農作業は繁閑の差が大きいことを考え、臨時雇用を中心に作業を回していこうというやり方も間違っていないだろう。経営規模が大きくなれば、それなりに管理部門をおくことも必要になるだろうが、まずは稲作の収益構造を確かめながら、地域との関係構築を目指す。

 大潟村あきたこまち生産者協会という、コメの栽培で長年の実績のある相手と組んだことも大きい。所詮、「餅は餅屋」なのだ。金融機関である三井住友銀が、いきなり栽培面で生産者をリードしようと思ったらそのほうがおかしい。銀行が強みを発揮するのはそこではなく、マネジメントだ。

 以上、「やみくもな投資はしない」「栽培は農家にまかせる」の2点が三井住友銀の農業参入の特徴だが、筆者が注目しているポイントはもう1つある。規模拡大を農地のリースだけではなく、作業受託も併せて考えている点だ。

作業受託という現実解

 まず、それが現実的な選択肢だという側面がある。減反廃止をきっかけに離農が増えることを見込んでいると上に指摘したが、一度にコメづくりそのものから撤退するとは限らない。例えば、高齢農家が「田植え機が壊れたから、田植えはもうやめる」というケースもあるだろう。全作業をあきらめ、離農する農家を待っていては事業の拡大にはずみがつかない。

 一方で、作業受託はべつの面からも意味がある。筆者はもともと、コメ農家が田植えから収穫まですべての作業を手がけることに疑問を持っていた。たかだか平均で1~2ヘクタールの田んぼしか持っていない零細農家が、田植え機もコンバインもトラクターもすべて持つことが、日本の稲作をどれだけ非効率にしてきただろうか。

 コメ農家のほとんどが兼業農家になり、休みを取りやすい5月の連休前後に田植えが集中したことで、「どの農家も機械を持つ」という問題が一段と深刻になった。兼業農家は兼業収入でこの非効率を補ってきたが、多くの兼業農家に後継者がいないことが示すように、そういうやり方はそろそろ限界だ。