まずは稲作の収益構造の理解から始める(東京都千代田区)

 ある意味、大手企業の農業参入としては例外的に地味なケースと言えるかもしれない。三井住友銀行が農業法人と組み、コメの生産と販売に乗り出すと発表した。豊富な資金を背景にした大規模な投資計画も、企業参入でよく連想するようなハイテクの栽培計画もない。

三井住友銀行 × あきたこまち

 まず、計画の概要を見てみよう。パートナーは、コメの生産から加工、販売を手がける大潟村あきたこまち生産者協会(秋田県大潟村)。両者と秋田銀行などが共同で新会社を立ち上げ、新たに稲作を始める。

 農作業は、長年稲作をやってきた生産者の役割。三井住友銀はコストの「見える化」を含む会計管理など企業的な経営手法の導入を担う。農地を借りる形で進めるほか、田んぼの耕運や代かき、田植え、収穫などの農作業の受託も手がけることで、実質的に経営規模を拡大していく。まず今秋から作業受託を始める計画だ。

 利益を確保するため、新会社は常勤の職員は大勢は雇用せず、臨時雇用を中心に農作業する。生産調整(減反)の廃止が予定されている2018年までは「試運転」という位置づけで、減反廃止をきっかけに離農が進み、規模拡大にはずみがつくと見込んでいる。3年で収支をとんとんにし、5年後に黒字化を目指す。

 管理する水田の面積は、10年後をめどに秋田県内で1000ヘクタールに増やすことを目標にしている。ここで農業ビジネスのノウハウを積み、将来は同じような共同出資会社を各地に展開するシナリオを描く。

 どうして銀行が農業に挑むのか。しかも、なぜあえて日本の農業のなかでもとくに状況の厳しい稲作なのか。三井住友銀は「このままでは稲作の担い手がいなくなる」と説明するが、もちろん、慈善事業で農業を始めるわけではない。