植物工場なんてうまくいくはずない――。農業界を取材していると、いまもそんな声を聞くことが少なくない。温度や湿度など室内の環境を高度に制御する太陽光型の施設を運営している人の中にさえ、人工光を使う閉鎖型の工場をあまり評価しない人がいる。

 自然と向き合うのがこれまでの農業だとすれば、そういう要素を極力排除する工場は農業にみえないのかもしれない。だが、農業界に根強いそうした「思い込み」を打破しようと、植物工場の運営に挑むベンチャー企業が誕生している。2014年に設立したファームシップ(東京都中央区)もその1つだ。

 代表の北島正裕氏は、この連載で幾度か紹介した植物工場の運営会社、スプレッド(京都市)で工場長を務めた経歴を持つ(2017年3月31日「最強の植物工場は『手作り』で完成させた」)。レタスを日量2万株以上生産する大型の工場で働いた経験をもとに、いまは「理想の工場」の実現を目指し、新たな施設の立ち上げに奔走する。

 植物工場の何が課題で、どんな可能性を秘めているのか。北島氏にインタビューした。

「植物工場の生産性はまだまだ高まる」と話す北島正裕氏(東京都中央区のオフィス)

工場長からコンサルティングへ

ファームシップを立ち上げた経緯を教えてください。

北島:スプレッドでしばらく工場長をやらせてもらい、植物工場の技術やノウハウを学びました。同じくスプレッドで働いていた安田瑞希と共同でファームシップを設立し、最初に始めた仕事はコンサルティングです。身一つ、知識を資産にできる仕事がコンサルティングだったからです。

 事業計画を作り、フィジビリティースタディーをやったりする仕事です。植物工場はどういう形にすれば、もっとうまくオペレーションできるのか、どうしたら初期コストを下げることができるのかを、自分なりに解釈しながらコンサルティングをしました。