インタビューが始まるとすぐ、タンクトップ姿の30代の従業員が、「社長、ちょっと」と言いながら部屋に入ってきた。黒々と日焼けした姿が、どちらかというと色白の田中さんと対照的だ。トラクターが故障したとのことで、田中さんが何ごとか指示していた。

 田中さんが農業法人の「西陣屋」を亀岡市で立ち上げたのが2年前。畑の面積はすでに6ヘクタールに拡大し、年内にさらに2ヘクタール増える見通しだ。法人化する前の初年度に1600万円だった売り上げは、わずか3年で8000万円を超すまでになった。

 業容の拡大そのものも目を見張るが、特筆すべきはその内容の変化だ。最初の年はネギを育てると、こと京都の従業員に畑に来て収穫してもらった。こと京都はそうして農家から集めたネギを、カットするなどの加工を施し、飲食店やスーパーに販売している。2年目は、3分の1は自分たちで収穫し、要らない葉をとり、洗ってからこと京都などに出荷した。

3年目の変化

 大きく変化したのは3年目。こと京都の従業員に収穫してもらうやり方は夏にやめ、7割は自ら収穫してこと京都などに出荷し、残りはラーメン店やお好み焼き屋などに直接販売した。

 販売方法の変化はそのまま売り上げにはね返る。こと京都の従業員に収穫してもらう方法の売り上げを1とすると、自ら収穫し、こと京都などに出荷する場合はその1.5~2倍、飲食店に直接売るとさらに3倍程度に増える。しかも、直接売るほうが利幅もいい。

 こうして、田中さんはたんにネギを栽培する農家から、農業経営者へと成長した。従業員を雇って法人化することは、独立当初から考えていたことだ。ただし、「最初は手探り。右も左もわからない状態で、人を雇うことはできませんでした」。いまは、5人の社員を含め25人のスタッフを率いるまでになった。

 これが、田中さんの日焼けが落ちた理由だ。「現場には出られなくなりました」。いまも、朝6時過ぎに事務所に来て、現場の責任者と打ち合わせはする。どの畑でネギをどれだけ収穫し、雑草を刈るかなど、作業計画のすべてを現場に任せるにはいたっていない。ただし、農作業じたいは現場の仕事。田中さんには出荷伝票の管理など経営の仕事が待つ。

出荷の準備をする従業員たち(京都府亀岡市)