なぜか。これに関連し、九州大学の南石晃明教授は「水面は鏡のように平らではない」と説明した。水の下の土の高低が一様でないだけでなく、場所によっては土が水面に出ている可能性もあるからだ。

九州大の南石晃明教授は「現場で使える技術の開発」に徹してきた(茨城県龍ケ崎市)

 横田氏は「あそこに土が見えているから、今よりもっと水位を上げるべきだと判断する」とも話していた。それはセンサーにできることではない。工場と違い、環境を均一にするのが難しい水田で、1カ所にセンサーを入れても田んぼ全体の状況を把握するのは不可能だからだ。

 こういう説明を聞きながら、改めて給水機を見ると、上のほうにスマホがくっついていることに気がついた。スマホには粘着テープが貼ってあり、これまた手作り感満載だった。南石氏によると、このスマホで田んぼの様子を写真に撮り、サーバーを経由して画像を1時間ごとに自動送信しているのだという。南石氏のスマホを見せてもらうと、稲と水面の様子が写っていた。

自動給水機からスマホに送られてきた画像。田んぼの様子がわかる(茨城県龍ケ崎市)

 これも田んぼの特性をもとにしたアイデアだ。例えば、センサーで測ると水位はゼロ、つまり土の高さまで水が引いたと判定するかもしれないが、実際には土がほとんど乾いていたり、逆に水を十分含んでいたりすることがあり得る。センサーの情報を画像で補足することで、両者の違いを把握する。

画像分析で水田状況の自動判定も視野に

 こうして蓄積した画像情報をAI(人工知能)で分析することで、将来的に水田の状況を自動で判定できるようにすることも視野に入れている。見た目はアナログでも、最新のテクノロジーを無視しているわけではない。それどころか、すでに実現している仕組みでも、関連特許を6件出願済みだ。だがこの先開発が進んでも、農家が数日に1回は田んぼに行くことを前提に考えている。南石氏は「我々は農家がまったく田んぼに行かなくなるようになることを目指してはいない」と強調する。