
住友化学が扱っているコメの品種は3種類ある。JA北つくばに販売しているのは、その1つの「つくばSD2号」。低アミロースなので粘りが強く、味がよくて収量も多い品種だ。
ここから先は前回とは違い、JA北つくばの視点から解説していきたい。なぜ、JA北つくばはこの品種の生産を農家に奨励することにしたのか。答えはずばり、「平成30年問題への対応」だ。
コメの増産、需給の乱れ、価格の暴落に備える
JA北つくばとコメの出荷契約を結んでいる農家は、主食用、エサ用、加工用などで延べ3400人。主食のコメの生産量は2016年の実績で約1万4000トン。そのうち、約94%をコシヒカリが占めるという、コシヒカリ偏重の産地なのだ。
言うまでもなく、コシヒカリはJA北つくばだけの品種ではない。関東では茨城、千葉、栃木の各県がコシヒカリの大産地。ほかの地方でも多くの県が幅広くコシヒカリを作っており、「天下の魚沼産」を擁する新潟県もある。では、「平成30年」が来れば何が起きるのか。JA北つくばの担当者は、危機感を込めて次のように語る。
「末端の農家には、減反が廃止になるという感覚の人が少なくない。そういう農家が、いっせいに主食のコメを増産するのは目に見えている。生産量が増えれば、需給が飽和状態になる」
2015年と2016年は、あえて農水省の言葉を借りれば減反が「うまく行った」。その結果、コメの需給がタイトになり、米価が上がった。だが、JA北つくばの担当者によると、「いまのような価格がいつまでも続くとは限らない。一気に需給が乱れ、価格が暴落するような事態も想定される」。そこで、コシヒカリ偏重を修正するために選んだのが、住友化学のつくばSD2号だった。
これは重要な論点だ。2018年に起きるのが減反の「廃止」なのか、「大幅見直し」なのかという言葉の問題に大きな意味があるわけではない。これをきっかけにコメの増産が始まると現場が予想していることが大切なのだ。
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