米に関してはいかがですか。

近正:「知り合いがヘアメークの会社をしていて、従業員は女性ばかりなんです。それで、1回、10人くらい集まってもらって、お米を食べ比べてもらったんです。うちのお米と、山形のつや姫、北海道のゆめぴりか、それからコンビニなどで使っている業務用のお米です。『どれがおいしいですか』とか『お握りにしたら1個いくらで買いますか』といった内容のアンケートです」

 「若い子の大半が『これがいつも食べてる味だ』ってわかるんです。業務用のお米です。僕らが一番おいしくないと思ってるお米を、『これいつも食べてる』『これが一番おいしい』って言うわけです。結果を発表したとき、40代でそれを選んだ人は『あちゃあ』って顔をしたんですけど、20代の人は『やっぱりわたし正しかった』っていう反応です」

 「食べ慣れているということなんでしょうけど、すごく衝撃でしたね。いままでお米を作って、いろんな人に食べてもらってきて、社交辞令もあるのかもしれませんが、『うまいねえ』って言われてきたので、初めてこういう意見を聞きました。味覚がすごく変わってきてると思いました」

脅威はない。変える自信がある

状況は厳しくないですか。

黒木:「僕はそうは思わない。データとしてはそうかもしれませんが、『こういうお米を使って、こうやって炊いてます』っていうことをパフォーマンスで伝えられるのが、東京の割烹(かっぽう)の良さなんです。東京はいろんな食材が全国各地から集まるので、それをちゃんとアピールしないといけない。そういうなかで、『いままで食べてきたお米は何だったんだろう』って考える機会を与えるのが仕事なんです」

 「脅威はまったくなくて、むしろそういうベースがあるから、ラッキーだと思ってます。これから僕はそれを変えられるし、変える自信があります。料理の一部としてちゃんと伝えられると思ってます。平均点が低い子は教えがいがありますよね」

近正:「たしかに、舌がコンビニなどの業務用のお米に慣れちゃって、お米に無頓着という人が多いかもしれない。でも一部のマーケットに対してきちっと、どう作って、どう保管しているのかを、いかに伝えるかだと思うんです。僕らが対面にこだわるのはそこなんです」

 「お米の弱点の1つは、お米のままでは食べられないことです。ご飯にする調理過程を、お客さんにゆだねないといけない。この店(くろぎ)はなかなか予約がとれませんが、『黒木さんのとこに行けば、おいしいご飯が食べられる』『お米ってちゃんと炊けばこんなにおいしいんだ』ということを伝えていくことは必ずできると思います」