前回は日本の食料問題の行方について考えた(6月29日「耕作放棄地で、棒を持って私をにらみ付けた子ども」)。このままいけば日本は国内の生産基盤が崩れ、しかも中国など新興国と経済力の差が広がることで、今までのように好きなだけ食料を確保するのが難しくなってくる。

 当然の帰結は、食料の値段の高騰。それを防ぐために必要なのが、農地の保全であり、効率的な農地の活用だ。もちろん、無駄な資金の投入の仕方をしたり、バラマキ的に誰でも支援の対象にしたりすれば、かつての公共事業のように批判が出るのは確実。それでも、ただでさえ狭い日本の農地をもっと効率的に利用できるようにし、国民に安定的に食料を供給するインフラを整えることは、政策として否定されるべきことではない。

政策の目的は農家の保護ではない

 日本の将来の食料事情のことを考えれば、かつて民主党政権時代に言われたように、「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズを掲げ、公共事業的な財政資金の使い方を一律に排除すべきではないだろう。そうやってインフラを整備することで、GPSやAI、ITなどの技術を、農業に活かす道が開ける。そうした技術の力を借りて農地を有効に使い、農業の収益性を高め、農地を次代につなぐのは農家の責務だ。

 ここでもう一度、論点をメーカーの研究開発に戻そう。クボタが開発した今回の機械は、自動運転を可能にはしたが、無人走行を前提にしているわけではなく、「人の姿が消えていく国土」という課題に応えるには次のステップが必要になる。そして、クボタは実際、無人機の開発にも挑戦しており、実用化は必ずしも非現実的な目標ではない。ここでもやはり、課題はそれを受け入れる圃場の整備であり、安全運転の指針となるガイドライン作りだ。

 働き手が急減し、食料問題の発生が杞憂(きゆう)とは言えなくなっていくこの国で農業は、民間企業の開発努力と、生産者の創意工夫、政府による支援の3者がうまくかみ合うことがますます重要になっている。政策の目的は農家の保護ではなく、国民への食料の安定供給。自動で動くコンバインに乗りながら、補助金を何のために使うべきかを考えた。