今後も世界の食料需要は増大し続ける。それは、生産技術の向上による単収の増加で、カバーできる範囲にとどまる可能性が大きい。だが、天候不順が集中的に起きれば、短期的に食料不足の懸念が高まる可能性がある。世界の需要が減ったり停滞したりしているのならともかく、増大するプロセスにあるから、リスクはいっそう鋭く認識される。そこで生産国が国境を閉ざせば、世界はパニックに陥る。余剰が前提の食料問題の宿命だ。

そびえ立つ上海の高層ビル。中国の拡大する「胃袋」が世界の食料問題を左右する。

 そうした中で日本は、国内の生産基盤の弱体化と、相対的な国力の低下による国際市場での「買い負け」のリスクに直面する。「この国の食の未来地図」を明るいものにするためには、安定して海外から食料を調達し続けるための戦略の構築と、国内の生産基盤の崩壊を防ぐための方策が必要になる。

 この連載では、これまでの常識を超える生産量を誇る植物工場や、生産効率を抜本的に高める新しい技術を取り上げてきた。斬新なアイデアとたゆまぬ努力で新しい農業のかたちを追求する経営者たちも紹介してきた。

農業の未来は日本の未来でもある

 彼らは農家というより、ベンチャー起業家と言ったほうがぴったりくる。だが一方で、農業に携わっているがゆえに、一般のベンチャーとは違ったミッション性も帯びている。食料の生産を支えているからだ。だから補助金で守るべきだと言うつもりはないが、彼らの努力の価値がことのほか重いことに思いをはせるべきだろう。

 5年前、「ニッポン農業生き残りのヒント」というタイトルでこの連載を始めたとき、頭にあったのは「どうすれば農業を再生させられるか」ということだった。だが最近、このテーマは農業という「都会にとって異質な世界」を扱っているのではなく、食料問題まで射程に入れているのだと思うようになった。農業の未来は日本の未来でもある。そう意識しながら、取材を続けたいと思う。