オランダ以外の国の動向はどうなっていますか。

久枝:日本は技術的にも経営体的にも非常に弱い。このままの状況が続くと、本当にまずい。韓国はかなりオランダにキャッチアップしていて、先進的な企業が誕生しています。九州から持ってくるのと、韓国から持ってくるのとどう違うのか。そういう競争時代がくる可能性が極めて高いと思います。

 アメリカのカリフォルニア州には、1平方メートルでなんと100キロぐらいとれる農場があります。半閉鎖系の施設で炭酸ガスの濃度などを細かくコントロールする農場で、オランダでもやっていない技術です。冷蔵船で7~8日で日本に持ってくることができます。

安全神話は本当か?

どんな政策が必要でしょう。

久枝:日本の生産者と技術がどうなるのかをもっと真剣に考えるべきだと思います。国際競争で勝負できる経営体を育てないと、施設園芸とそれを取りまく業界がなくなってしまうのではないかと思っています。そういう事態が間近にみえています。

 日本のトマトは高い。オランダの房取りトマトの値段は日本の3分の1以下です。価格状況をみると、海外勢が本気になれば、日本に持ってくることが可能です。いくら「輸出だ」と言って号令をかけても、収益性で勝る海外から攻め込まれることになりかねません。

 日本産は安全という話もありますが、本当にそうでしょうか。いま、(農業生産の国際認証の)「グローバルギャップ」で安全性を担保することが国際的なコンセンサスになっています。2020年のオリンピックが日本の消費者の意識改革のきっかけになる可能性があります。国産の安全神話が崩れ、ルールにのっとって作ったものが安全というように変わるかもしれません。

 危機的状況です。もう企業努力では埋めることができないくらい海外との差が広がっています。政策的にやるしかないと思います。小さい田んぼを大きくするため、土地改良事業で何千億円も使っていますね。それと同じように、政府が温室を造って貸し出すことを考えるべきだと思います。

 ずっと補助する必要はありません。実務者が中心の教育機関を国と民間が共同で作り、研究から研修、コンサルティングを手がける。そこで研修した人にリースする大型の農業団地を各地に造る。ここまでやれば、あとは民間の自己資金で事業を拡大できるようになります。波及効果で設備が安くなり、技術も普及して、補助金なしの事業ができるようになると思います。

 今年、オランダで更新された温室は500ヘクタールあります。それと比べると微々たるものかもしれません。でも、こういうことをやらないと、競争力のある企業を育成できないし、技術革新も進まないと思います。

国産の安全神話は本当だろうか?
国産の安全神話は本当だろうか?

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