当然の判断だ。作り手が「これがリーディング品種です」といくら言ったところで、ブランドが成立するわけではない。コメの味の専門家か、消費者の口コミによる評価があってはじめて、特定の品種がブランドとしての価値を帯びることができるようになる。「森」がダメだから「輝き」と言って誘導しようとして、ブランドがすぐにでき上がるほどマーケティングは甘くはない。

高機能炊飯器、ブランド競争困難に

 しかも、今や特Aが期待ほどブランド化を支えるかどうかも疑わしい。2017年産は43の産地・品種が特Aに「輝いた」。Aにいたっては76。これに対し、BとB’はいずれもゼロ。品種開発と栽培技術の両面で研究機関や生産者が努力を重ねた結果、多くのコメが十分においしくなった。様々なコメをおいしく炊くことのできる炊飯器が続々と登場していることも、コメのブランド競争をいっそう困難なものにしている。

 今回はここまで。特Aを手がかりに、コメの味を向上させようと努力する産地の努力を否定するつもりはまったくない。味が優れ、高温にも強いくまさんの輝きは、熊本産の地位を高める可能性を十分に持っている。生産者がそうした努力をいとわない日本の稲作は、消費者にとってとてもハッピーなことだ。ただその結果、特定の品種が安定して優位に立つことはますます難しくなっている。

 この先、産地の対応は様々に分かれていくだろう。別格のブランド米を持ち、その「威光」のもとで、マスマーケットを狙う「普及版」の品種を持つのが理想。多くの産地と同じように、熊本県もそれを狙う。一方で、特色を出すことができず、他の作物への転換を迫られる地域が出る可能性もある。マクロで見てコメが余っている現状に照らせば、それが健全な姿だろう。今回のテーマからはそれるが、農地の保全と食料問題への対応は他の観点から考えるべきだと思っている。