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新しい仕組みを作る好機に

 カゴメの農場を立ち上げるため、久枝氏がオランダに渡ってから、すでに20年近くがたつ。だが、そのとき久枝氏が感じた驚きを、日本の農業界に伝える意義はいまでも十分にあると思い、今回は過去の話にとどめることにした。

 技術を高めるため、農業者同士がノウハウを持ち寄るアカデミックな気風もさることながら、考え込まざるをえないのは、経営に対するオランダの考え方だ。「赤字ならやめる」。ふつうの産業では当たり前なこの発想を、日本の農業界はどこまで共有しているだろうか。

 実態は真逆だ。「企業は赤字になったら、すぐに撤退する」。企業の農業参入に反対する人の常とう句だ。もちろん、田畑を守るためには、農業の収益性の低さに耐え、集落で支え合う必要があることも少なくないだろう。

 だが一方で、赤字なのに退出しない体質が、新たな経営の芽を摘んできた側面はないだろうか。赤字経営を可能にしたのは、補助金だろうか。それとも、兼業収入だろうか。そういったものがないと経営が成り立たないと考える根拠は、いったいどこにあるのだろうか。

 日本の農業は高齢のもと兼業農家が大量に引退しつつある。これは、戦後日本がかつて経験したことのない、不連続な変化だ。この変化に直面し、「いままでの仕組みは間違っていない。再構築すべきだ」と考えるのか、「新しい仕組みを作る好機だ」ととらえるのか。農業と農村はその狭間で揺れている。

 次回は、時計の針を現時点にまで進め、間近に迫る厳しい国際競争のことを考えてみたい。オランダを始めとした施設園芸の最先端の動きと、久枝氏の政策提言がおもな内容になるだろう。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売