しかも、国内競争だけではありません。日本は外国から食料が入ってこないと、どうしようもなくなってます。海外の農産物を買っていかなければならない。そこで、海外のコメには勝てないので、政策に頼って外国産を入れないようにして産地を守ればいいのか。それで消費者に支持されるでしょうか。

 「勝てるはずない」っていうけど、勝たなければならない。外国産を運賃乗っけてまで日本に持ってきて、それに勝てないようなら、まず「何かが足りないのではないか」と考えるべきです。

 稲作は農業の原風景だと思います。全国で作ってるし、もともとお金の代わりにもなってきた。農業が始まってからずっと、この間まで足りない状態だった。日本の農業の変遷の中で、コメにはつねに政治や行政が絡んできた。その風習にはなかなか断ち切れないものがあると思います。

 だから全国一律でやるべきだというのではなく、主産地として果たすべき役割を自分たちで考えないといけない。都合のいい協同組合論や旧態依然とした習慣を変えていきたい。周囲に同調してほしいとは思いませんが、周りから何を言われようと、一石を投じていきたいんです。

農業の価値に対する揺るぎない信念

今回のインタビューで記事にしないほうがいい部分はありますか。

小田嶋:とくにありません。

 もしかしたら、読者の中には小田嶋氏が農協の上部組織に対して「けんか腰」と思った人もいるかもしれない。実際、世の中にはそういう組合長もいて、多くのメディアは、上部組織との関係を断ち切った農協のことをあたかも「改革の旗手」のように報じてきた。

 小田嶋氏はそういう路線とは一線を画す。ふるさと農協が取引している卸の1つ、全農パールライスは社名が示すとおり、全農の子会社だ。小田嶋氏は取材で、「よくやってくれている」とくり返した。彼の言葉はときに農協組織に対する鋭い批判になるが、思いは「生産を振興したい」の一点につきる。農協の中では「異端児」かもしれないが、「反逆児」ではないのだ。

 以前この連載で、家族で一緒に過ごす時間を作るため、金融機関をやめて就農した若い夫婦を紹介したことがある。都会の喧噪を逃れるための脱サラではなく、農業の価値に正面から向き合う形の就農だった。そのとき、小田嶋氏から「自分の若いころを思い出す」というメールが来た。農業の価値に対する揺るぎない信念が、小田嶋氏の言葉の小気味よさの背景にある。

 AI(人工知能)や高精度のセンサーなど、新しい技術の導入によるイノベーションは、農業の発展に対する前向きな情熱がなければ成立しない。最新技術の活用から、次代につなぐべき農業スピリッツの真価まで、両腕を大きく広げるようなテーマの大きさが、農業取材の魅力だと思う。

JAグループは未来の農業ビジョンを示せるだろうか(東京・大手町)