自分からすれば、「邪魔しないでほしい」と言いたくなります。減反廃止が決まって以降の5年間、どうすべきか真剣に考えてきましたか。「減反廃止で10アール当たり7500円の補助金がなくなる」「自民党政権が悪い」などと騒ぐだけで、自分たちの頭を使って生産振興するための努力をして来たでしょうか。

組合長がやる気になれば、農協も変われるのではないですか。

小田嶋:みんな「悪い人」になりたくないって思ってるんじゃないでしょうか。中央会の会長になりたいって思えば、あまり変なことをしなくなるんです。中央会の理事会で「いい子」になってた方が、会長への道が開けてくると思ってる人が多いんでしょう。

 私も県組織から「お願いだから、周りを刺激しないでほしい」と言われてますよ。自分は中央会の会長になろうとは思いませんが、農協のことは変えていきたい。異端児と言われているかもしれませんが、「私の言っていることにまともに反論できますか」って思うんです。

 農協の組合長は農家の代表で、「生産現場はこういう方向を目指すべきだ」っていう絵を描かなければならない。全中は日本の農業の目指すべき姿を、県中央会は県の目指すべき姿をもとにして、産業振興の方策をしっかり考えないといけない。でも、そういうことがきちんとできているでしょうか。できるだけ今までやってきたことを残すための改革になってはいませんか。

どんなビジョンを描くべきでしょう。

小田嶋:いかに生産振興するかが、農協の本来の役割です。減反廃止で、やっと本来の役割に戻れるんです。農家には売ることを心配させないで、「一生懸命どんどん作ってください」って言えるようになった。

 減反で作る量が決まっているから、「単価の高いコメを作ろう」っていう方に行ってしまった。でもそれって、本来あるべき姿じゃないと思うんです。(コメが余ってるから増産するなというのは)大きなお世話です。

 農業は限られた農地を有効に使い、食べ物をたくさん作るのが技術の「一丁目一番地」だと思います。それなのに、「作るな」という短期間で終わらせるべきいびつなことを半世紀も続けたから、農業本来の道徳が失われてしまった。それでは、この国の農業がまともな形で残っていくわけないんです。中央会が今だに生産振興に行かないで、「生産調整が必要だ」と言っている意味がわからない。農家は疲弊するだけです。

競争に負けて撤退する産地が出るかもしれません。

小田嶋:そのことは想定されます。その結果、適地適作ということになってくるんです。自然な話です。

 協同組合の理念と言っても、単体の協同組合の中で地域振興するのが目的であって、まったく別の農協から「うちはコメが余ってる」と言われてもどうしようもない。「余ってたら、ほかのことやったらいいでしょ」って話です。自主自立です。自分たちが困っているからって、ほかを巻き添えにすべきではないと思うんです。

減反廃止後の新たなコメ事業を目指す秋田ふるさと農協(横手市)

農業のあるべき姿を見せたい

 私だって「人をつぶしてまで」とは思ってませんよ。でも自分は中央会のために農協やってるんじゃなくて、地域の農家が安心して農業できるように努力してきました。努力してこなかった人たちに足を引っ張られてしまっては、地元の組合員の期待を裏切ることになってしまうんです。

 自分の組合員たちに農業のあるべき姿を見せてきたと思ってます。本来は土地をもっと有効に使い、「欲しい」と思われる食べ物をいっぱい作る。それが農業の目的だから、「原点に帰るんだ」って言って、5年前からやってきました。農政運動にエネルギーを使うより、自分の頭を使い、知恵を絞り、汗をかき、人に信用してもらえるような仕事をして、そのうえであるべき姿を作ることができるなら、自分はそっちの方を選びたい。

 伝統的な農協関係者からすると、「あいつは何てヤツだ」と思われるかもしれません。協同組合はお互いに助け合うことが目的ですが、それは頑張った人の足を引っ張っちゃいけないという話でもあると思う。困ったときだけ協同組合の理念を持ち出されても、困るんです。