農協の上部組織には、農産物の販売や肥料の調達などの事業を手がけている全農のほかに、農協の活動方針を決める県の中央会や全国農業協同組合中央会(全中)があります。彼らのことをどう見ていますか。

小田嶋:(1995年の食管制度廃止で)米価運動はなくなったのに、同じようなことをくり返しているという印象を受けます。コメ政策に関して、必要なのかどうか疑わしい大会を開き、国会議員を呼んで反対したり、若い人を壇上に上げて決意表明させたりしてます。そのときどきの農政の課題に対し、「危機突破集会」みたいなものを開く。昭和30年代や40年代の写真を見せてもらったら、当時も危機突破集会をやってました。ほとんど同じことを、やらなければならないからという理由で、今もやっているように感じます。

 去年も夏に、減反廃止に反対する集会が秋田で開かれました。自分もステージに上がりましたが、「あいつ絶対つまんないと思ってる」ってほかの農協の人たちから見られていたと思います。実際、「何意味のないことやってるんだ」って思ってましたから。地元の国会議員からも「おまえ、つまんねえって思ってるだろ。おれもそうだ」と言われました。

 政策に「ああだ、こうだ」って言ったって、こっちは決める立場にはないし、抵抗したってどうなるもんでもありません。自分たちに必要な政策なら活用すればいいし、必要ないなら、乗らなければいいだけだと思ってます。

重要なのは用水の確保

農政に期待すべきなのは、水田の生産効率を高めるためのインフラ整備ではないですか。

小田嶋:そこは十分やってくれてます。水田を大きくする区画整備の問題もありますが、もっと重要なのは用水の確保です。水をちゃんと使えるようなインフラ整備が大事です。エジプトやオーストラリアなど日本より単収が多い国は、用水が確保されてます。日本も一応確保されてますが、それでも結構窮屈に感じるときがあります。用排水路が経年劣化していて、その整備が収量を安定させるための一番のカギを握っています。ただ、国はそこはちゃんとやってくれているので、安心しています。

民主党政権が導入し、今年廃止された戸別所得補償制度よりも、今の政策支援のほうがいいですか。

小田嶋:民主党政権で土地改良が停滞しました。あのころは、基盤整備をしようと思っても、自己負担が大きかった。あれだけ所得を補償されると、「自分たちでお金を出して土地改良しなさい」って話にならざるをえない。「インフラ整備は受益者負担で」っていう考え方になってしまうんです。

コメの増産について、県からも問い合わせはありましたか。

小田嶋:減反という制度の立法事実が消滅したから、制度をなくすっていう話になったんだと思います。作付けを制限しなくても、農家がコメばかり作るような状況ではなくなったので、減反を決まりとしてやらなくてよくなったんです。実際、コメを作る人って絶滅危惧種みたいに少なくなりつつありますから。

 それでも県庁からは、うちの担当者に「何を根拠に増産するのか」っていう問い合わせが相当ありました。県にも「ふるさと農協のやり方を、県としてもやりたい」と言ってくれる人もいますし、全農の県本部も応援してくれてます。でも(農協の活動方針を決める)県中央会と、県庁の一部は「ただでさえコメは余っているのに、増産したら大変なことになる」と心配しているようです。ずっとコメが余ってきたことがトラウマになっているんでしょう。