ここで、その後、江藤さんが手がけたデザインをいくつか紹介しておこう。トマト農家のグループ「東京みずほトマト」のロゴマークだ(デザイン②)。

「トマトの栽培でがんばっている、いろんな年代の農家の集まりです。箱をつくるのがゴールだったので、遠くから見てもトマトと感じてほしいと思ってつくりました。最近の農業界のデザインはシンプルなものがはやってますが、あえてそうでない要素を入れました」
「同じフォーマットのデザインで、6人の農家の似顔絵も描きました。農家さんのなかには口べたな人もいるので、『これがおれだよ』とか、お客さんと会話が生まれればいいと思いました」
同じトマトの生産者でも、コンセプトが違えばまったく違ったデザインになる。ファーム柳沢のロゴマークだ(デザイン③)。

「都内のレストランにも出荷しているので、洗練された感じを出すには、シンプルで細い文字がいいと思いました。この農場の特徴は、完熟のトマトを出荷していることです。なので、トマトのデザインは輝く宝石のようなものを、ちょっとカクカクさせて描きました」
王道になってほしい
では、「東京NEO-FARMERS!」はどうデザインしたのだろう。この連載でかつて取り上げたように、東京NEO-FARMERS!は、東京都農業会議の松沢龍人さんが奔走し、都内で就農する農家が増えたことで誕生した(2015年4月10日「これはもう革命と言っていいんじゃないだろうか」)。
江藤さんがデザインを手がけたのは、都内で就農する若者はまだ珍しい存在で、松沢さんが就農支援のために孤軍奮闘していた時期だ(デザイン④)。

「これからの農業の定番、王道になってほしいという希望を込めて、文字はすごくシンプルにしました。緑の縦線は草だったり、人だったりして、このデザインを使う場所によって伸ばすことも縮めることもできます。ドシッとしたデザインで、ネオファーマーズが5年、10年と育っていって、緑の縦線を見たら、『あ、ネオファーマーズだ』って気づいてもらえればと思ってます」
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