今回は新しい農業のサポーターを紹介したい。デザイナーの江藤梢さんだ。都内の若い新規就農者の集まりの「東京NEO-FARMERS!」の懇親会で何度か見かけたことがあるが、ニコニコしながら静かに座っているという印象を持っただけで、どんな活動をしているのかを詳しく聞く機会はなかった。

「デザインで売り上げアップに貢献したい」と話す江藤梢さん

 これまで取材で幾度か経験してきたが、口数が少なくて控えめな人が、必ずしも消極的な生き方をしているとは限らない。むしろ、声の大きい人よりも、よほど強い信念を内に秘めていることが多い。江藤さんもそんなケースのひとつと言えるかもしれない。

 フリーで仕事をしている人は多くのサラリーマンとは違い、何かしら人生の紆余曲折がある。江藤さんの場合は専門学校を出たあと、5年間で4つの仕事を経験した。「もう転々としていました」という。

デザインから農業へ

 最初はデザイン事務所に勤めた。「デザインの基礎を教えてくれました。いまでもありがたいと思ってます」。新人にもかかわらず、デザインを褒めてもらえた。だが、うまく組織に溶け込めなかったこともあり、事務所を辞めた。「自分が一番悪かったんです」。

 2社目は内装会社。勤めた期間は2年弱で、ここが最も長い。ただ、ほかの会社がつくった図面にそって仕事をすることが多く、「一から企画ができる会社」がいいと思い、会社を去った。

 3社目は再びデザイン会社。最初のデザイン会社は、アイデアやセンスで勝負するようなところがあった。これに対し、この会社は「何でこのフォントで、なぜこの色なのか」といったことを、きちんと説明するよう求められた。社内で企画を通すためでもあり、顧客に説明するためでもあった。

 厳しいが、充実した仕事だった。だが、徹夜したり、終電で帰宅したりすることが少なくなかった。今度は「自分のできなさ加減を痛感し、精神的にも体力的にもきつくなりました」。次は一般企業のデザイン部門で働いたが、そこも社風になじめず、短期間でやめた。

 職場を転々としてきた江藤さんに対し、「根気がない」と思う人がいるかもしれない。だが、4社目をやめたことをきっかけに、不連続な変化が起きる。就農しようと思い立ったのだ。