田植えが終わった田んぼで、苗が風にそよぐ(秋田県横手市、浅舞酒造のホームページより)

 田植えを終えたばかりの田んぼで、柔らかな風を受けて苗がそよぐ。日本各地で毎年くり返されてきた当たり前の光景だ。だが、秋田県横手市にある30ヘクタールほどの田んぼにとっては、今年は特別な意味を持つ。偽装肥料で被害を受けた、浅舞酒造(横手市)に酒米を納める農家たちの田んぼなのだ。

 4月13日、浅舞酒造の本社近くの食堂で、「JA秋田ふるさと平鹿町酒米研究会」の総会が開かれた。研究会が発足したのは1988年。浅舞酒造に酒米を提供する農家たちが、JA秋田ふるさとの組合員なのでこの名がある。

 研究会のメンバーは19人。「いままでは助走期間。これからが本当のスタートだ。くじけないでやっていこう」。参加者を代表し、研究会の一員であり、浅舞酒造の杜氏(とうじ)でもある森谷康市さんがこうあいさつした。今後の方針を確認すると、昨年とれたコメでつくった新酒がふるまわれた。「がんばろう」。再起を誓う声があがった。

9割偽装…「特別栽培米」農家に大打撃

 発端は昨年10月。全国農業協同組合連合会(JA全農)営農・技術センターの調査で、太平物産(秋田市)が製造販売している肥料のうち1銘柄について、成分が必要とされる量に達していないことがわかった。これを受け、JA全農は太平物産に対し、ほかの肥料でも間違いがないかどうか確認を求めた。

 もともと営農・技術センターの調査は、稲作用の肥料の開発に生かすためのもので、不正を暴くことが目的ではなかった。だが、JA全農による立ち入り調査や工場長へのヒアリングで明らかになった不正の実態は、予想をはるかに超えていた。JA全農が昨年12月に出した報告書によると、なんと「調査可能な726銘柄の約9割に問題があることが確認された」。